政府が「同一労働同一賃金」を掲げる中、東京メトロの売店で働く非正社員が、正社員との待遇格差が不当だと東京地裁で争っている。同地裁では5月、定年後再雇用の契約社員のケースで、定年前と同じ仕事なのに賃金が低いのは「不合理」との判断が出た。判決は年度内とみられ、今回の判断も注目されている。
訴えているのは、東京メトロ子会社の契約社員、後呂良子さん(62)ら4人。時給制で月額では16万円程度だ。後呂さんらは、正社員の最低22万円程度(入社10年、40歳以上の場合)とは待遇に格差があると主張。労働契約法20条に違反しているとして、子会社に計4200万円の損害賠償を求めている。
23日の証人尋問で後呂さんは「時給制なので休みの多い月は収入が減って生活が苦しい。同じ売店で同じように働いているのだから、差をつける理由は無いと思う」と述べた。
一方、会社側の元総務部長は「社員には配置や職種の転換がある」「正社員らは、売り上げが多く業務の密度が高い店に配置されている」と、正社員と非正社員の違いを強調した。
政府は「1億総活躍プラン」で、同一労働同一賃金を掲げる。同じような職務では正社員か非正社員かに関わらず同じ賃金とする考え方で、非正社員の待遇の底上げを図る。今後、賃金差がどのような場合に合理的とされるかを示すガイドライン(指針)の策定を検討している。労働契約法の改正も見込まれており、裁判の動向も議論に影響を与える可能性がある。(北川慧一)