真剣な表情で監督の話に耳を傾ける鹿児島特別支援の矢野裕介君(手前右端)ら=鹿児島市
2日開幕の第98回全国高校野球選手権鹿児島大会に鹿児島特別支援が初登場する。鹿児島修学館・加世田常潤(かせだじょうじゅん)・鹿児島第一の3校と連合チームを組んだ。日本高校野球連盟によると、特別支援学校の「夏」への参加は全国初。選手たちは「野球ができる感謝の気持ちをプレーで表現したい」と意気込む。
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鹿児島特別支援には軽度の知的障害のある生徒が通う。部員は3年生3人、2年生1人の計4人。創部は2014年春で、野球経験のある新入生らが学校に訴えたのがきっかけだった。その夏に県高野連加盟が認められ、昨秋、今春の大会も連合チームで出場した。
部員を束ねるのが主将の矢野裕介君(17)だ。勉強がちょっと苦手。中学進学後は国語や数学などの授業は通常とは別の教室で受けた。クラスを行ったり来たりする中、うまくなじめず休み時間は一人で過ごすことが多かった。入部した軟式野球部では同級生の打球を見て「自分は下手」と落ち込んだ。守備練習でゴロをこぼすと下を向いた。2年の秋に退部した。
「自分はいてもいなくても良い存在」と自信が持てなかった。だが、高校野球へのあこがれは強かった。週4回の練習に加え、週末には他校との合同練習にも出向いた。定位置の一塁から「さあいこーぜ」と声を張り上げるムードメーカーに。「プレーしている姿から野球が好きなんだなというのが伝わってくる」と連合チームの主将、鹿児島修学館の松田佳大君(17)。
高校球児だった父の嘉文さん(48)は今春の県大会でスコアボードに「矢野」と表示された写真を携帯電話に大切に保存している。「昔は下ばかり向いていたのに、今は笑顔が多い。高校野球のおかげ」と話す。
鹿児島特別支援の顧問、四本剛教諭(48)は「『どうせ自分には無理』といったそぶりが少なくなった。自己肯定感が出てきたのかな」と目を細める。初戦は開幕日の2日、鹿屋農戦。矢野君は「高校野球のおかげで前向きになれたと思う。ヒットを打って試合に勝ちたい」と意気込む。
特別支援学校は07年、学校教育法改正で盲、聾(ろう)、養護学校が一本化されてできた。過去には北城(きたしろ)ろう学校が1982、83年に沖縄大会に出場し、「遥(はる)かなる甲子園」のタイトルで本や映画にもなった。12年に中部農の分教室で学ぶ沖縄特別支援の生徒が中部農の一員として沖縄大会に出場したことがあるが、チームとして夏の大会に出場するのは今回が初めて。(長野佑介)