火星衛星のフォボス(左)とダイモス=NASA/JPL-Caltech/University of Arizona提供
火星の衛星「フォボス」と「ダイモス」が形成された過程を、東京工業大の玄田英典特任准教授らの研究グループがシミュレーションで明らかにした。火星に巨大な天体が衝突し、飛び散った岩石などが集まってできた可能性が高いとみられる。4日付の英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス(電子版)に、論文が掲載される。
フォボスとダイモスは、それぞれ半径10キロほどの衛星。その起源をめぐっては、火星の近くを通った天体が火星の重力に捉えられて周回を始めたという説や、天体衝突により作られたという説などがあったが、はっきり分かっていなかった。
40億年ほど前、火星に巨大な天体が衝突したことが分かっている。研究グループはこの天体衝突の影響をコンピューターでシミュレーションした。その結果、衝突により火星から飛び散った岩石などが、数千年かけて集まった結果、二つの衛星が誕生したと結論付けた。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2020年代に、火星の衛星から物質などのサンプルを持ち帰る計画を検討している。今回のシミュレーションにより、衛星が火星由来の物質でできていることが明らかになったことから、東工大の玄田特任准教授は「計画が実現すれば、火星の物質を地球に運べる可能性が高い」と期待している。(山崎啓介)