筋力をきたえるレジスタンス運動に取り組む糖尿病の高齢者ら=東京都板橋区の東京都健康長寿医療センター
厚生労働省の調査によると70歳以上の4割が、糖尿病かその予備軍とされる。糖尿病で血糖が高いと認知症などのリスクが高まる一方、治療で低血糖になっても症状が出にくく、重症になるケースもあることがわかってきた。関係学会は最近、少し「緩め」の目標値を決めた。高齢者の特性に応じたケアが大切だ。
特集:老いとともに
■症状気づかず重症化
東京都内に住む那須キイさん(89)が糖尿病と診断されたのは20年あまり前。血糖を下げる複数の薬を飲み、自宅の周囲を30分ほどかけて歩くのを日課にしている。
過去1~2カ月の血糖値を反映する「ヘモグロビン(Hb)A1c」が一時9%を超えたこともあったが、最近は7%ほどで安定している。最近、高齢者向けにやや緩めの血糖管理の目標ができたと聞き、好きなお菓子をほんのちょっと増やした。「この年だし、楽しみもないと」
日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会は5月、65歳以上の患者に向けた血糖管理の目標値を発表した=表。重症の低血糖を起こすリスクを下げるため、体の状態や年齢に応じて従来の値を少し緩和した。
糖尿病患者の血糖は、低めに保つほどいいと考えられてきた。だが、高齢の患者を対象とした国内の研究で、脳卒中は血糖が高くても低くても起きやすいとの報告が出された。野田光彦・埼玉医科大教授は「少なくとも高齢者の患者にとって、血糖は正常な人に近づければいいわけではない」と話す。
低血糖は、食事や運動の影響で…