女性に路上でわいせつな行為をしたとして、鹿児島市の無職の男(73)が強制わいせつ致傷罪で起訴された事件の控訴審で、福岡高裁宮崎支部(岡田信裁判長)が6月、「起訴状で被害者を特定しておらず、一審の訴訟手続きに法令違反があった」として一審・鹿児島地裁判決を破棄していたことがわかった。
高裁支部判決によると、男は昨年7月7日午後9時45分ごろ、同市の路上で当時18歳だった女性の下半身を触り、その際にけがを負わせたとして起訴された。
一審で検察側は、女性の実名を記載すると被告が女性の自宅を突き止める恐れがあり、女性の母親が二次被害を心配しているなどと、起訴状に女性の名前を記載しなかった理由を説明した。鹿児島地裁は昨年12月、男に懲役4年を言い渡した。
これに対し、岡田裁判長は判決で「実名を記載することで具体的な支障は生じないのに、服装などの情報しか記載せず、検察側は特定性に乏しい方法をあえて選択した」と指摘。「訴因を明示して記載しなければならない」とする刑事訴訟法に反しているとして、「訴因不特定のまま漫然と判決を出しているので、原判決の破棄は免れない」と結論づけた。その上で、検察側が被害者の記載を実名に改めると口頭で説明したことを受け、一審の事実認定を踏まえて改めて男に懲役4年を言い渡した。