ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は27日、仏北西部ルーアン近郊の教会襲撃で司祭が殺害された事件に触れ、「世界は戦争下にある。だが、宗教戦争ではない」と述べ、宗教対立が強調される風潮を戒めた。ポーランドの古都クラクフに向かう機中で語った。
事件の容疑者は過激派組織「イスラム国」(IS)に傾倒する若者だった。ISはシリアやイラクで対IS空爆に加わる欧米諸国をキリスト教徒の「十字軍」とみなし、攻撃を呼びかけている。法王は、「全ての宗教は平和を願う。戦争を望むのは他の者たちだ」として、宗教ではなく、経済的な利権や金、資源といったものが戦争を引き起こしているとの見解を示した。また、殺害された司祭はその犠牲者の一人であるとしつつ、多くのキリスト教徒、罪のない人々、子どもたちが戦争の犠牲になっている実態に目を向けるよう呼びかけた。
イスラム過激派によるテロは、欧州各地で移民排斥の動きを助長している。ポーランドでは、保守強硬派政党「法と正義」のドゥダ大統領が昨年5月の選挙で当選。同党は同年10月の総選挙でも単独過半数を得て政権を奪った。前政権が賛成した欧州連合(EU)の難民受け入れ策とその分担を拒否している。
法王は27日、古都クラクフ中心部のバベル城で、ドゥダ大統領やシドゥウォ首相らを前に演説し、「戦争や飢餓を逃れてきた人たちを進んで歓迎する精神が必要とされている」と訴えた。(クラクフ=山尾有紀恵)