笹の川酒造の酒蔵の中に設置されたばかりのウイスキーの蒸留器。山口哲蔵社長は「東北で蒸留器を置いてある酒蔵はここだけ」と話した=福島県郡山市、福留庸友撮影
ハイボール人気やNHKの連続テレビ小説「マッサン」の影響で活況の国産ウイスキー業界で、小規模だが個性的な味で勝負するクラフト蒸留所が注目されている。1980年代に手軽な値段で流行した「地ウイスキー」とは一線を画し、彼らが目指すのは高品質の本格派。刺激を受け、異業種からの参入組も現れた。
福島県郡山市の「笹の川酒造」は創業251年の今年、約25年ぶりの蒸留再開に向けて設備を新調した。社長の山口哲蔵さん(63)は「何年も熟成させるウイスキーには、1年ごとに時間が巡る日本酒とは異なるロマンがある」と話す。
戦後、進駐軍向けにウイスキー製造免許を取得。80年代は「チェリーウイスキー」が飛ぶように売れたが、89年の酒税法改正に伴う値上げで需要が低迷。蒸留をやめ、主に他社から買った原酒をブレンドしたウイスキーを売ってきた。
だが、「色々なウイスキーの味を楽しむ人が増え、市場が広がっている」と気づき、再開を決めた。きっかけは、国内唯一のウイスキー専業メーカー「ベンチャーウイスキー」(埼玉県秩父市)の肥土(あくと)伊知郎さん(50)との出会いだ。
肥土さんはサントリーに勤務後…