市尼崎の古川莉央君=阪神甲子園球場、伊藤進之介撮影
(9日、高校野球 八戸学院光星5―4市尼崎)
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■市尼崎 古川莉央君
「トイレの神様」という歌がある。女の子が願い事をかなえたくてトイレをぴかぴかにする曲だ。そんなことして効くのかな。
市尼崎で磨き続けたのは、僕。始めたのは昨年の3月17日。きっかけは竹本監督の一言だ。練習試合で、プレー中の約束事を破って雷を落とされた。「技術じゃない。何か一つ継続することから始めろ」
朝練前の30分間、グラウンド脇のトイレを最上級生が輪番で掃除するのが野球部の「伝統」。2カ所あるうちの一つのトイレを下級生の僕が担当することになった。野球と関係ないわ。裸足にかかる水が冷たくていらだった。
3カ月後、監督から「まだやるか?」と問われ、「やりきります」って意地を張った。悔しくて言ったけど、続けていると練習試合で人生初の2打席連続本塁打。チームも33年ぶりに甲子園へ。これ、トイレ掃除のおかげかな。
甲子園へは背番号18で臨んだ。いいことありますようにって試合前、室内練習場にあるトイレットペーパーの先を、普段通り三角形に折り込んだ。試合は出番なし。でも2点を追う九回、しびれる光景をみた。
「応援席をみろ!」。監督の言葉で仰ぎ見たアルプス席は、スクールカラーの緋色(ひいろ)が波打っていた。心強かった。直後、同点に。1年4カ月と24日目。涙でよくみえないけど、トイレの神様は確かにいたって思える。(藤田絢子)