京都翔英の中山翔太君
(10日、高校野球 樟南9―1京都翔英)
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■京都翔英・中山翔太君
入寮5日で脱走した。他にも逃げた人はいる。でも、入学式の前というのは、たぶん最速記録だ。
2年前の4月。午前5時、15人の大部屋をそろりと抜け出した。最寄りの宇治駅まで猛ダッシュ。新幹線も使い、地元岡山駅へ。ただ改札を抜けると、険しい表情の父宗光さんが立っていた。「やばい」。こっぴどく怒られた。母純子さんは涙した。「自分で決めたんじゃないの」
中学までは「お山の大将」。野球も一番うまいと思っていた。中3になる春(3年前)の選抜大会に出た京都翔英に憧れた。でも上下関係は厳しく、敬語が話せず怒られた。関西弁もなじめない。新入部員も例年の2倍いてレベルも高い。つらくて「グーグルアース」で実家の画像を探すうちに里心がついた。
岡山から寮まで車で連れ戻されると、伊地知部長に言われた。「父さんと母さんを悲しませることするなよ」。胸に刺さった。親孝行しなきゃ。その一心で頑張った。部長の個別ノックを受けてショートの守備も磨いた。でも、最後の夏はメンバーに入れなかった。
スタンドだったが、甲子園は格別だった。やめずに続けてよかったと思う。でも親に見せたかったのはグラウンドでの姿。だから野球を続ける。そのために大阪の宿舎に来てからも、メンバーより遅くまでバットを振った。今月下旬には大学の野球部の選考がある。明日も練習しよう。(岩佐友)