自宅でギターを手にする遠藤賢司さん=東京都世田谷区、品田裕美撮影
不滅の男――。自作曲からそう愛称される純音楽家のエンケンこと遠藤賢司(69)が、がんで闘病中だ。代表作の「満足できるかな」のデラックス・エディションが発表され、記念の再演ライブも控える折も折。エンケンさん、相変わらず、吠(ほ)えてます? こわごわ会ってきた。
全身迫力全身音楽のエンケンには、何度会っても緊張する。若干やせたが、大きな体もそのままに、手を差し出した。声に、力も張りもある。
「去年の末に体調を崩してね。ランニングを欠かさない生活だったのに、全身に力が入らず、家の階段も上がれなくなった。遺書を書いた」と告白する。検査の末、胃がんを宣告された。手術せずに治療するが、ギターを弾く指先には激痛が走る。「手がもげるかと思うような、6、7時間のギター練習」の日課も、できなくなった。
エンケンが1971年に発表したセカンドアルバム「満足できるかな」は、はっぴいえんどのメンバー(細野晴臣、鈴木茂、松本隆)が参加していることでも知られる名盤。未発表テイクなども収録したデラックス・エディションとして8月に出ることは決まっていた。
「聴き直して、うれしかったんだなぁ。よくぞこんなわがままやっていたなあって。はっぴいえんどと演奏するのが、よほど楽しかったんだろうね。ほとんど一発どり」
表題曲の、ピアノ、ベース、ドラムズによるリズムのファンキーさは、日本語ロックの誕生を高らかに宣言するようだった。
「ピアノは細野くん。当時、なんでおれがフォークって呼ばれるのか、全然わからなかったんだよ。フォークの人たちと聴いてるものも全然違ったし。レッド・ツェッペリンやT・レックス、スレイドなんかよく聴いていた。全然フォークじゃないでしょ」
東京の大学生時代から音楽を始…