西松建設(本社・東京)が国会議員側などに違法献金した事件をめぐり、同社の株主が元役員10人に約6億9千万円の損害賠償を求めた株主代表訴訟は9日、東京高裁(後藤博裁判長)で和解が成立した。原告側によると、10人のうち9人が連帯して同社に1億5千万円を支払うことで合意したという。
和解にはこのほか、同社が「政治資金の不透明な支出があったことを反省する」として、国会議員らの政治資金収支報告書をインターネット上で公開する一般財団法人「政治資金センター」(大阪市)に1千万円を寄付することも盛り込まれた。訴訟は、このセンターにかかわる市民団体「株主オンブズマン」(大阪市)が2009年に起こしていた。
原告側によると、和解条項には献金の違法性や、それぞれの元役員が関与した内容についての言及はなかったが、原告側は「元役員が事実上、違法献金の責任を認め、支払いに応じたと考えている」と評価した。
裁判で原告側は、小沢一郎氏や二階俊博氏ら多数の国会議員側や自治体首長側に対し、同社がダミーの政治団体を経由して献金したり、パーティー券を購入したりして多額の政治献金をしたと主張。元役員らは不当な支出を知りながら防ぐ義務を怠ったと訴えた。
一審・東京地裁は元役員6人について「違法献金の手法を容認した」と認め、計約6億7200万円を同社に支払うよう命令。原告と被告6人の双方が控訴していた。
この事件では、小沢氏や二階氏の当時の秘書が政治資金規正法違反罪に問われ、有罪が確定したり罰金の略式命令が出たりしている。同社の元社長も同法違反の罪で有罪が確定した。元社長は今回の訴訟の被告には含まれておらず、別に同社が起こした損害賠償請求訴訟で和解が成立している。(伊藤和行)