銀メダルを手に笑顔をみせる木村敬一=金川雄策撮影
(14日、競泳男子100メートルバタフライ決勝)
一番ほしいメダルには、また手が届かなかった。木村敬一は、世界ランク1位で臨んだ14日の競泳男子100メートルバタフライ(視覚障害)で、銀メダルに終わった。これまで50メートル自由形で銀、100メートル平泳ぎは銅。結果を告げるコーチの声を聞くと、しばらくコースロープに頭を当てたまま、天井を仰いだ。
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前半はトップで折り返したが、後半は伸びなかった。ラスト20メートル。競っていた左を泳ぐスペイン選手と手がぶつかった。右へよけると、コースロープにぶつかり失速。0秒19差、逆転を許した。
全盲の木村にとって、曲がって泳ぐことは避けられない。野口智博コーチは、まっすぐ泳ぐことを目指さず、曲がっても泳ぎ切れるパワーを木村に求めた。
毎朝5時過ぎに起き、2回の練習と1日5食で体を作ってきた。体重は10キロほど増え、この種目で金メダルをとるために水泳漬けの日々を送ってきた。半年前からは緊張で眠れぬ日も少なくなかった。一番最後にプールを上がると、木村は顔をゆがめて涙をこらえた。「終わるとあっけない。この悔いは、死ぬまで残ると思う」(斉藤寛子)