創価学会の原田稔会長。「東京大空襲で焼け出されました。戦争の悲惨さは忘れません」=東京都新宿区、早坂元興撮影
理想を掲げる宗教。現実の世界を動かす政治。創価学会はその二つの領域に関わる。巨大な宗教法人として、また、自民党と連立を組む公明党の支持母体として影響力は大きい。そもそも宗教がなぜ政治に関わるのか、「平和」の問題をどう考えているのか。現在のポストに就いて10年を迎える原田稔会長に話を聞いた。
――池田大作名誉会長は88歳。最近は表立った活動を控えています。体調はいかがですか。
「元気にしておりますよ。執筆活動などに専念しています」
――最近はいつ会いましたか。
「ええ、この夏の研修で」
――重要な判断も可能なのですか。
「もちろんです。ただ、数年前からは、基本的に運営は執行部に託し、見守っています」
――いま、意思決定の過程はどうなっているのでしょう? 集団指導体制なのですか。
「そう理解していただいていいんじゃないでしょうか。私をはじめとする執行部内で相談しつつ、大きな方向性を定めています。とはいっても重要な問題もありますから、執行部は名誉会長に報告すべきことは報告し、指導を受けています」
――原田会長が重い判断も下しているのですね。
「任されている立場として、きちっと責任を果たしていく。二つの肩にかかるものはなかなか重くてねぇ、背が少し縮んだ気さえします」
《「平和主義」「人間主義」を掲げ、核兵器廃絶の運動や難民支援活動などを行っている。》
――一方で、創価学会には「わかりにくい」との声もあります。どのような行動原理なのですか。
「朝夕の勤行・唱題の最後に『世界の平和と一切衆生(しゅじょう)の幸福のために』と祈ります。科学がいかに発達しても、人は生老病死(しょうろうびょうし)という苦しみからは免れることはできませんよね。人間の苦悩を根本的に解決し、希望ある人生を送る。仏法では他者の幸福を願い、行動することによって自らも幸福になる。自身の幸福は社会の平和がなくては達成できません」
「これは宗祖である日蓮が鎌倉幕府に示した『立正安国論』で強調しています。立正とは『生命尊厳』の理念が社会に確立されること。安国とは人々が安心できる平和社会を実現すること。日蓮の思想には世界の民衆を救うという目的がある。私たちが国内にとどまらず『世界宗教』を目指すのもそれが根本にあるからです」
「人間疎外の状況が深刻な現代こそ、自分と同じように全ての人をいつくしむ慈悲の精神が社会から求められると思います。『自他共の幸福』を掲げ、よりよい社会への変革を目指しているのです」
――宗教が政治や選挙に深く関わることには批判もあります。
「政治に関心を抱くのは、宗教者の社会的使命として自然なことです。乱世こそ、人格が優れ、高い理想を持った政治家が必要です。他党に先駆けて『大衆福祉』を掲げた公明党には国民のために奉仕してもらいたいので、選挙という形で応援しています」
――会長が公明党の山口那津男代表らに、考えを伝えることは?
「まったくないかというと、そうではない。山口代表は後輩でもあり、意思疎通は図っています。これでもかなり自制しているつもりですけど」
――池田名誉会長は歴代首相と…