渡月橋を背景に手を振る月橋渡。「渡月橋君」と呼ばれることが悩みだ。「紛らわしくてすいません」=京都市右京区
真っ白なお化けのような風貌(ふうぼう)。背中には橋を背負う彼の名は「月橋渡(つきはしわたる)」。京都・嵐山のご当地キャラクターだ。口癖は「すいません」。グッズも発売され、人気も定着しつつあるが、地元に受け入れられるまでには少し時間がかかった。
特集「京都 よむ・みる・あるく」
嵐山の観光名所・渡月橋(とげつきょう)の妖精で、桂川に渡月橋が架かったとされる平安時代生まれという設定だ。デビューは3年前。大人の観光地のイメージが強い嵐山に、女性や子どもをもっと呼び込もうと、京福電鉄嵐山駅前にある嵐山商店街が「ゆるキャラ」制作を企画したことがきっかけ。
デザインは京都嵯峨芸術大に依頼。学内コンペには約30件の応募があり、天龍寺のダルマ、竹や人力車など嵐山らしさを生かした図案が集まった。最終選考では、女性や子どもを対象としたアンケートを実施。月橋渡は総投票数の8割近くを集め、見事トップに輝いた。生みの親で同大学の卒業生、伊東史佳さん(23)が「嵐山にしかなく、インパクトのあるものを目指した」という自信作だった。
採用はされたものの、いきなり逆風にさらされる。いざ地域住民にお披露目すると、「気持ち悪い」「世間に笑われる」「嵐山にふさわしくない」という厳しい意見がとんだ。商店街内部ですら「そもそも観光資源が豊富な嵐山にゆるキャラなんていらない」との声も。イラストをもとに着ぐるみを作ると、不気味さに拍車がかかり、インターネットの一部で「キモい」と話題になった。
商店街の幹部は、商店主らに頭…