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被害者名の報じ方など議論 朝日新聞あすへの報道審議会

作者:佚名  来源:asahi.com   更新:2016-10-1 12:37:00  点击:  切换到繁體中文

 

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河野、小島、湯浅各パブリックエディターと編集幹部が車座で議論した=越田省吾撮影


朝日新聞社は「あすへの報道審議会」の第2回会合を9月20日に東京本社で開き、読者代表のパブリックエディター(PE)と編集幹部が報道内容などを議論した。犯罪被害者の実名・匿名報道について、相模原事件取材陣の被害者名をめぐる動きや思いを本社側が報告したうえで、話し合った。続いてリオデジャネイロ五輪・パラリンピック報道についても意見交換した。


「あすへの報道審議会」のページ


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「あすへの報道審議会」で発言するパブリックエディターの(左から)河野通和さん、小島慶子さん、湯浅誠さん



■実名か、匿名か 相模原事件の取材側の思い


岩田清隆・東京本社地域報道部兼社会部次長 事件発生日の夜、神奈川県警は亡くなった全員を「A子さん」「K男さん」という匿名で発表し、理由を「現場が障害者の入所する施設で、遺族の強い要望があった」と説明した。これだけの重大事件で名前が発表されないのは極めて異例だ。


記者たちは亡くなった方の遺族をさがしたが、手掛かりはほとんどなかった。ようやく重傷者の家族に話を聞くことができ、記事で実名を出してもいいという方が出てきて、7月30日付朝刊「愛する息子 隠していられない/被害者匿名 家族ら葛藤」という記事で、重傷の被害者と家族の実名と写真を掲載した。


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「あすへの報道審議会」で発言する岩田清隆・社会部次長



1人の遺族のインタビューもでき、8月2日付朝刊で「姉、懸命に生きてきたのに」を、匿名を希望する遺族の意向を踏まえて記事にした。「障害のある子がいることで(親戚の)縁談に影響が出るのでは」との理由で引っ越した経緯や「(匿名にすることで)自分は姉の人生を否定しているのか」といった迷いを書いた。今後も実名で取材に応じてもらえる遺族をさがす作業を続けたい。


中島耕太郎・横浜総局次長 匿名発表については、県警の記者クラブで何度も総会を開いて、「警察発表は実名が原則。匿名にするかどうかは報道機関の責任で判断する」と申し入れた。「知りうる限りを読者に」という思いで早朝から深夜まで走ったが、取材は困難だった。施設近くに住む職員、元職員や献花台に訪れる方々に声をかけ、断片的な情報をつなぎ合わせていったが、亡くなった方々の人生が像を結ばぬもどかしさがあった。


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「あすへの報道審議会」で発言する中島耕太郎・横浜総局次長



ただ、実名で取材に応じてくれたある重傷者の家族は、「容疑者に負けたくない。自分たちは決して不幸ではないと伝えたい」と話した。被害者の方たちにも取材への対応には濃淡があり、一律にブラックボックス化してしまうことには違和感が強い。


匿名ながら遺族に話を聞けた新人記者は、8月2日付朝刊の掲載翌日の葬儀に参列した。そこには掲載紙が並べられ、遺族から「区切りがついた」と声をかけられた。この記者は神奈川版にこう書いた。「棺(ひつぎ)の中で、きれいに化粧を施された小さな顔がほほ笑んでいた。障害があろうとなかろうと、その人にはその人だけの人生があり、それはこんな形で奪われていいものではなかったはず」


こういう思いを社会で共有していく。そこに私たちが取材する理由もある。


久保田正・ゼネラルマネジャー(GM)補佐 朝日新聞は記者行動基準や事件報道の指針となる冊子「事件の取材と報道」で実名報道の原則を掲げ、いずれも公表している。「伝えるべき事実の核心」「人としての尊厳や存在感が伝わる」「捜査のチェックに不可欠」などの考え方からで、少年事件や性犯罪被害者などで例外的に匿名とすることを定めてきた。だが、こうした考えが広く読者や社会の理解を得られるか、今は心もとない。そこで事件報道の見直しに取り組んでいる。


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「あすへの報道審議会」で発言する久保田正・ゼネラルマネジャー補佐



背景には、警察や役所の匿名発表の増加とネット社会の進展がある。2005年に閣議決定された犯罪被害者等基本計画で、実名を発表するかどうかを警察が個々の事件で判断することになった。日本新聞協会などが、こうした方針を容認できない、とする共同声明を発表しているが、見直しの動きはない。また、ネット上でプライバシーが暴かれることへの不安から、当事者が名前を伏せてほしいと思うのも特別なことではなくなってきた。


ただ、匿名とすることで、一人の人間・人格として尊重されない社会を容認し、差別意識の固定化あるいは助長につながってしまうという懸念を持っている。「書いて人権を守る」の姿勢を貫きたい。取材に批判があるのも承知しているが、遺族の言葉の重みも経験から知っている。警察の実名発表は必要で、こうした考え方を理解してもらうには、愚直に説明を続けていくしかないと考えている。



〈相模原事件〉 相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で7月26日未明、入所する障害者が相次いで刺され、19人が死亡、多数が重傷を負った。事件後、施設の元職員の植松聖(さとし)容疑者(26)が出頭して逮捕された。平成元年(1989年)以降、死者の数としては最悪となった。植松容疑者は、事件前から手紙やビラに障害者をおとしめる内容を記していた。朝日新聞社は9月末の時点で、死亡者の名前を報道していない。


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「あすへの報道審議会」に出席するパブリックエディターの小島慶子さん(中央左)、湯浅誠さん(同右)=越田省吾撮影



■パブリックエディターの意見は


河野通和・パブリックエディター(PE) 相模原事件には、無抵抗の19人が殺害された凶悪性と、「障害者はいなくなればいい」という容疑者の異様なメッセージがある。なぜ起きたのか、どうしたら防げるのか、社会としてどう克服していくのか。それに向き合うのが報道の目的だ。今回、警察が被害者を「A子さん」「K男さん」といった記号で発表したことにショックを受けた。シベリア抑留から帰還した詩人石原吉郎は、大量殺戮(さつりく)に対して「人は死において、ひとりひとりその名を呼ばれなければならないものなのだ」と書き残している。死が数でしか語られない悲しさを私たちは知っている。


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「あすへの報道審議会」で発言するパブリックエディターの河野通和さん



湯浅誠PE この事件で当初は「実名報道すべきだ」と思っていた。被害者の方が「消される」感じがしたからだ。今は「時間をかけて実名報道できる環境を整えるべきで、かつその態勢も伝えていく必要がある」という考えに変わっている。私自身、75歳の母と、重度身体障害の50歳の兄がいる。数年以内に限界を迎え、それぞれ施設に入所してもらわざるを得ないかもしれない。だからその時には、後ろめたさを拭えないだろうとも思う。「施設に預けるのは親・家族の責任放棄」という考えは今も根強くある。相模原事件の多くの遺族が「そっとしておいてほしい」と願うのは想像に難くない。


河野PE 犠牲者には高齢者が目立つ。1996年に優生保護法が母体保護法に改正される前からいた人もいるだろう。当時は障害者への偏見が今以上にあったのだから、実名の開示に警戒感をより強く抱いているのではないか。


小島慶子PE 警察に実名発表を求めることは大事だ。その点で朝日新聞は努力している。しかし、実名で報道するべきかどうかは別問題だ。被害者遺族たちは身内を亡くして耐えがたい思いをしているのに、さらに新聞に名前が出ることで、「さらし者」になるのを恐れているのではないか。被害者や遺族、読者に納得できる説明が必要だ。


湯浅PE 実名とする理由をかつてよりも厳しく問う必要があるし、名前を出すからには取材相手の立場をどう守るかをしっかりしないといけない。


小島PE 報じる際には、インターネット環境の存在を考えなくてはいけない。そこでは無数の匿名の書き手がいる。「プロ」が真剣に報道のルールを整備しても、ネット空間では、匿名の者が好き勝手に犯罪被害者のプライバシーに踏み込むことが後を絶たない。


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「あすへの報道審議会」で発言するパブリックエディターの小島慶子さん



藤谷健・報道局ソーシャルメディアエディター ネット空間で最近起きたことでいえば、子どもの貧困に関するNHKの報道をめぐり、登場した高校生への中傷が広まった。9月14日付朝刊「ニュースQ3」でも取り上げた。貧困を訴えた高校生の自宅の映像や、高校生のものとされるツイッターなどから、「貧困というのはNHKの捏造(ねつぞう)」と「炎上」した。断片的で不正確な情報をつなぎ合わせた批判によって、コントロールのしようがない状態になった。


湯浅PE 取材相手の実名を出す時には、その人の過去のツイッター発言などにも気をつけたい。


小島PE 報じた内容だけでなく取材の手法にも触れたい。記者は遺族の近所で、「(相模原事件で被害に遭った)○○さんのことを知りませんでしたか」と聞いて回っていなかったか。そのしかたによっては、被害者家族のプライバシーが周囲に知られることになってしまわないか。


角田克・東京本社社会部長 取材する時は細心の注意を払っているが、難しい問題だ。しかも事案によっては、多数のメディアが集まる「メディアスクラム」の状態になりかねず、よりいっそう難しい。


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「あすへの報道審議会」で発言する角田克・社会部長



河野PE マスコミ報道に対する批判的な見方が根強くある。「人の不幸をメシの種にしている」「人の迷惑を顧みず、お祭りのように騒いでいる」といったものだ。過去の悪(あ)しき例が頭にある。


中島横浜総局次長 現場を取材した4人の記者が思いを神奈川版(8月31日、9月1日付の「やまゆり園事件を取材して」)につづった。ある記者は、「悩みながら取材を続けてきた」と書き、葬儀に参列した記者は、涙が止まらなかったという。


河野PE そうした記事は、多くの読者の「新聞はどういう思いで取材しているのか」という気持ちに応えるものだと思う。現場記者の思いを伝えていくことが大事だ。私は朝日新聞社が実名報道の実現をめざす、「名前を書くことで人権を守る」という姿勢は支持したい。


湯浅PE 今回の事件で「匿名であること」がいろいろなことを語っている。パラリンピックを見ていると、障害者への理解が進んだ気にもなるが、根っこの方は微動だにしていないことがこの事件によってよくわかった。


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「あすへの報道審議会」で発言するパブリックエディターの湯浅誠さん



7月28日付毎日新聞夕刊で、全盲と全ろうの重複障害がある福島智・東大教授の投稿記事が載って、「人間の尊厳や生存の意味そのものを、優生思想によって否定する『実存的殺人』」と指摘していた。固有名詞を持った人間として社会に記憶を残すことが尊厳の回復につながるという原則は大事にしたい。私自身も、実名だからこそ世の中を変える力があるという思いで活動している。その上で、実名を出すリスクが高まっている状況にも対応し、それで傷つく人を出さないようにしたい。


久保田GM補佐 薬害エイズも、ハンセン病も実名を出して声を上げた人がいたから社会が変わっていった。今回の事件でも、被害者19人の遺族の誰かから声が上がれば変わっていくと思っている。


湯浅PE 特に政治記事などで、情報源について「政府高官は……」のような匿名報道が多いように感じる。実名にこだわる事件報道と矛盾しているのではないか。一般市民が対象の時と差はないか。


中村史郎・ゼネラルエディター(GE) 朝日新聞の記者行動基準で情報源について三つの原則を設けている。情報の出所は可能な限り明示する、情報源の秘匿を約束したときはそれを守る、オフレコ(オフ・ザ・レコード)を安易に約束しない、だ。匿名を条件により本質に迫った話を聞けることもあるし、内部告発のように、情報源を守る意味もある。読者に誤解を招かないため、安易な匿名取材はしないよう心がけていきたい。


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「あすへの報道審議会」で発言する中村史郎・ゼネラルエディター



長典俊・ゼネラルマネジャー(GM) 実名で報道するのは三つの意味がある。一つは本人にとって「人格のしるし」であること。二つ目は家族にとって「生きてきた証し」であること。三つ目は社会にとって「リアリティーに迫って考えられる」ことだ。だから朝日新聞はこれからも実名にこだわって取材していく。悩みながら取材していく過程を大事にしたい。


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「あすへの報道審議会」で発言する長典俊・ゼネラルマネジャー




◆読者の声 被害者の氏名が公になっていないことを、もっと掘り下げてほしい。朝日新聞やその他のメディアの姿勢や考え方を、丁寧に説明してほしい。(福岡県 50代男性)


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「あすへの報道審議会」に出席するパブリックエディターの河野通和さん(左端)、湯浅誠さん(右端)、小島慶子さん(右から2人目)=越田省吾撮影



■リオ五輪・パラリンピックの報道について


河野PE 選手心理から作戦、チーム、家族などの証言をよく集め、充実したインサイドストーリーが多かった。映像で見たことを文字で確認させてくれた以上に、科学的分析や新たな視点を与えてくれた。取材の厚み、新聞の底力を感じた。


宮田喜好・東京本社スポーツ部長 時差が12時間あり、朝刊に結果が入りにくい今回、テーマを三つたてた。①新聞の勝負どころとしてインサイドストーリーの充実②メダル至上主義ではない五輪の意義③激変するデジタル環境下での対応、だ。①では陸上男子400メートルリレー決勝のバトンパス戦略に焦点を当てた「7センチの勇気 銀のリレー」(8月21日付朝刊)、バドミントン女子ダブルス決勝の「逆転劇 遊び心の緩い球」(8月20日付朝刊)などを1面で展開した。「ライブ感のある裏話は積極的に1面へ」という社内の空気は、ロンドン五輪の前から出てきた。


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「あすへの報道審議会」で発言する宮田喜好・スポーツ部長



小島PE 「復興五輪は被災地に視線を戻すことから」と提言した「自由自在 復興五輪というメダル」(8月27日付朝刊)に共感した。東京五輪と東日本大震災からの復興はどうからむのか。1964年の東京五輪のように、自分自身も社会も世界も変わったと思えるような大会になるのか。像が見えないところに、新聞が言葉や絵を埋めていくことが必要だろう。


梅原季哉・東京本社編成局長補佐 「復興五輪」という言葉は、五輪招致のための道具として使われてしまった面がある。ご指摘の点は、日々の報道内で点検していきたい。五輪が肯定的な遺産になるのかどうかは、事前のインフラ投資から開催後までを長期的に見ていく。


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「あすへの報道審議会」で発言する梅原季哉・編成局長補佐



湯浅PE パラリンピック選手もアスリートとしてとりあげるようになったのは喜ばしいが、「メダル至上主義」には違和感もある。国や社会への貢献度合いで人を評価する価値観にもつながりかねない。頑張っている選手は否定できないが、「メダリストの活躍」以外の、「斜めからの」切り口も磨いてほしい。


時差が大きい今回、朝日新聞デジタルでの展開も注視した。男子マラソンの猫ひろしさんを追った特集「ボクがカンボジア人になったワケ」や、「マツコ・デラックス×パラアスリート」などは内容が良かったのにあまり読まれず、もったいない。


平栗大地・デジタル編集長 ネット読者は1コンテンツに費やす時間が短い。デジタルの特集ページは動画やアニメーションなどウェブならではの技術を駆使していて内容も深く分量もあるので、テキストだけの記事ほどアクセスを集められないことがある。ただ、「ボクがカンボジア人に……」は配信直後の2日間で約60万回もアクセスされた。今大会はスマホの読者数がパソコンの読者を逆転した。PC読者より滞在時間が短いスマホ読者にいかに長く、多くのコンテンツを読んでもらえるようにするかが東京五輪への課題だ。


大野明・東京本社映像報道部長 試行錯誤で作りながら、初めて気付くことがある。例えばパラアスリートを動画などで紹介した「チャレンジド」では「プ」と「ブ」などが見分けやすいフォントを使ったり、音が聞こえない方のために場面を文字で説明したページをおこしたりと工夫した。


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「あすへの報道審議会」で発言する大野明・映像報道部長



河野PE 「五輪より、もっと大事な問題を」と憂えた読者もいたが、メンタルの強さを見せたテニスの錦織圭さんら新しい日本選手の姿を通して、今の日本社会のダイナミズムを伝えていたと思う。ただドーピングや招致費用の問題、国際オリンピック委員会の運営など、積み残された問題はある。新聞にはそこも期待したい。


中村GE スポーツイベントを通じて日本の被災地や障害者スポーツの問題など、できるだけ多角的、多面的に報じたつもりだが、過剰報道という指摘はしっかり受け止めたい。



◆読者の声 開催期間中、リオ五輪の記事の占める割合が大きすぎ、スポーツ紙を読んでいるようだ。地域面でも五輪の記事が掲載され、少し過剰に感じる。他にももっと重要な記事があるのではないか。(富山県 50代男性)


■議論重ね現場から声発信 常務取締役編集担当・西村陽一


犯罪や災害を報じるたびに現場の記者は実名か匿名かの葛藤に直面してきた。一人の人間が生きてきた証しを実名で報じることの力は否定できないし、死が「記号と数」でしか語られないことほど悲しいものはない。


一方で、個人情報保護法の施行と改正で社会の匿名化が進み、その間のソーシャルメディアの普及で「ネットに名前が流れたら攻撃される」という警戒や不安が高まってきた。私たちメディアへの厳しい視線も加わり、現場の記者やデスクの悩みは深まっている。


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「あすへの報道審議会」で発言する西村陽一・編集担当



朝日新聞社は記者行動基準や事件報道の指針を作成、改定するとともに、記者研修では殺人事件の遺族をお招きし、メディアスクラム体験や心許せる記者との交流について語っていただいている。当局には実名公表を求め、事件ごとに社会的影響や関係者への配慮を勘案しつつ自らの責任で実名匿名を判断するとの原則に変わりはないが、そのためにはメディアへの信頼を築かなければならない。大切なのは一つひとつの記事と具体的な議論の積み重ねだ。匿名化ゆえの問題や報道被害について問いかけるとともに、悩みながら取材を続ける現場の記者の肉声も発信していきたい。



■パブリックエディター


河野通和(こうの・みちかず)さん 「考える人」(新潮社)編集長。1953年生まれ。


小島慶子(こじま・けいこ)さん タレント、エッセイスト。1972年生まれ。


湯浅誠さん(ゆあさ・まこと)さん 社会活動家。法政大教授。1969年生まれ。



〈あすへの報道審議会〉 社外の声を紙面作りや取材により生かそうと、本社が今年度新設した。読者代表として紙面作りなどに意見を述べるパブリックエディター(PE)が本社の報道内容について、紙面モニターらの声をもとに編集部門の幹部らに疑問や意見を述べ、議論する。この審議会は、社外の有識者らから本紙に意見を寄せてもらう「紙面審議会」に代わる組織。初回会合は7月に開き、「参院選報道」や本社が改革を進める「訂正・おわび」のあり方について読者の声を紹介しながら議論した。司会は本社パブリックエディターの松村茂雄。




 

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