成年後見人として管理していた高齢者の預金を使い込んだとして業務上横領罪に問われた元弁護士、渡部直樹被告(49)に対し、東京地裁は7日、懲役6年(求刑懲役7年)の実刑判決を言い渡した。稗田雅洋裁判官は「成年後見制度に対する社会の信頼を揺るがしかねない悪質な犯行だ」と批判した。
判決によると、渡部被告は2011~15年、法定後見の2人と任意後見1人の計3人の高齢者の口座から、計約1億1200万円を引き出して横領した。
公判で弁護側は、被告は双極性障害の精神障害があり、犯行当時は善悪の認識能力が著しく損なわれた「心神耗弱」の状態だったと主張した。判決は、被告を診断した医師の証言をもとに、「精神障害の症状は認められない」と判断。横領した金は事務所費や借入金の返済、キャバクラでの豪遊に浪費した、と指摘した。
この事件をめぐっては、被害女性2人が新たに選任された成年後見人を代理人に、計約7900万円の損害賠償を求めて提訴。東京地裁が9月、渡部被告に全額の支払いを命じる判決を言い渡し、確定した。女性側は、渡部被告を成年後見人に選任した家裁にも責任があるとして、国にも損害賠償を求めて提訴している。