山梨県甲斐市から無償で借り受けた医療機器のそばに立つ「このはな産婦人科」の院長・中村朋子さん
産婦人科医が足りない状況を解消する取り組みが各地で広がる。公費を投じて医院を「誘致」したり、都市部の病院に通う費用を負担したり……。産婦人科医の数が7年ぶりに減少に転じたとする調査結果が近く発表される中で、「安心して産める環境を整えたい」との思いがある。
「これまで、どこで産んだらいいのか悩んでいました。ありがたい」。南アルプスの山々を背に田畑が広がる山梨県甲斐市。開院初日の3日、「このはな産婦人科」に来た女性(34)はうれしそうに語った。
妊娠2カ月の女性は初めての出産。一方で、人口約7万5千人の甲斐市には妊婦を健診する医師はいるものの、出産できる施設はない。このはな産婦人科も出産はできないが、この女性ら妊婦のカルテは5キロほど離れた山梨大病院(同県中央市)との間で全て共有されている。
出産が間近になったり、夜間・休日に急変したりすると、山梨大病院がスムーズに受け入れてくれる。自分のことを何も知らない病院に行き、一から説明する必要もない。「おなかが大きくなってから、車を運転して別の病院に通い出すのも大変。産める場所が決まっているということは安心です」。女性は話す。
このはな産婦人科を切り盛りするのは院長の中村朋子さん(48)。先月末まで山梨大病院に勤めていた。少子化と都市部の大病院に医師が集中した影響で地域に出産施設が少なくなり、数年前には年間400台だった出産数が昨年は571に増加。同大病院は順番待ちの妊婦たちであふれ、婦人科系の病気の女性に手術を待ってもらうこともあったという。
「なんとかしないと」。中村さ…