会見に臨むトヨタ自動車の豊田章男社長=12日午後6時35分、東京都文京区、角野貴之撮影
トヨタ自動車とスズキは12日、環境や安全、ITなどの分野で業務提携の検討を始めると発表した。自動運転技術などに巨額の投資を続ける体力が限られるスズキと、自社開発の技術の影響力を広げ、欧米メーカーや自動車市場に参入するIT企業に対抗したいトヨタの思惑が一致した。
トヨタの豊田章男社長とスズキの鈴木修会長が同日、都内で記者会見して発表した。両トップとも「自動車産業を巡る技術環境は大きく変化している」と強調。業務提携の具体的な中身は今後話し合うが、「良品廉価の車づくりでは行き詰まる」(鈴木会長)との危機感が提携検討の背景といい、プラグインハイブリッド車(PHV)などの電動化技術や、自動運転に欠かせない人工知能(AI)などでの協力が中心になるとみられる。スズキは軽自動車で3割のシェアを持つが、先進技術の開発では出遅れており、トヨタから技術の提供を受けたい考えだ。昨年、独フォルクスワーゲン(VW)との提携を解消しており、トヨタに助けを求めた形だ。
一方、トヨタは自社技術を使った車の台数を増やすことで開発コストを抑える。また、今後普及が見込まれる燃料電池車などのエコカーの規格や自動運転のルールづくりなどで提携相手を増やすことで、主導権を握る狙いがある。スズキが高いシェアを握るインドでの拡販の足がかりにする狙いもあるとみられる。
鈴木会長は「独立した企業として経営していく覚悟に変わりはない」と語ったが、将来の資本提携の可能性について、鈴木会長、豊田社長とも「ゆっくり考える」と話し、否定しなかった。自動車業界では、マツダが昨年、トヨタと包括提携し、日産自動車が燃費不正が発覚した三菱自動車を傘下に収めることを決めるなど、提携の動きが加速している。(山本知弘)