食欲を抑え、楽にやせたい。そんな思いにつけこみ、「全国最安値」を売り文句に、服用を誤れば健康被害の恐れがある向精神薬を「ダイエットピル」として売りさばいていた医師が逮捕された。モラルを捨て、金もうけに走った医師の事情とは。
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9月26日、東京地裁の713号法廷で開かれた裁判員裁判の初公判。濃紺のスーツにネクタイを締め、姿勢を正して法廷に立った被告の医師の男(58)は、裁判長に起訴内容について問われると、「間違いありません」と答えた。
起訴状によると、男は向精神薬「サノレックス」を4人の男女に計約6千万円で売ったほか、販売用に約110万錠を所持した麻薬特例法違反の罪に問われた。また、向精神薬を売るため、インターネットで不正に広告した罪にも問われた。
公判などから事件の経緯をたどる。
被告は1988年、医師登録。勤務医を経て、2012年、東京・六本木駅近くの一等地に皮膚科・形成外科の「アーバンライフクリニック」を開設し、院長になった。クリニックの「売り」は「ダイエット外来」。2年後には、クリニックのホームページ(HP)で「サノレックス 1錠350円」「全国的に最安値」「その場でお渡し」などと宣伝を始めた。
サノレックスには食欲を抑える効用があり、「ダイエットピル」(やせ薬)として知られる。検察側は、サノレックスは「やせ願望」を実現させる「夢の薬」である一方、食欲抑制効果には耐性があり、次第にやせにくくなるため、薬を増量してやめたくてもやめられなくなる、と主張した。
覚醒剤に似た依存性もあり、他人に危害を加える「戦闘モード」が高まることもある。また過剰に投与すれば、呼吸困難や昏睡(こんすい)などのおそれもあるという。
このため、医師の適切な処方や管理が必要とされるが、被告が入手した約110万錠のうち、患者に正しく処方したのは3%に満たなかったという。
被告人質問。
弁護人「(インターネットの広…