行方不明になっている男児の捜索現場から袋のようなものを引き揚げる捜査員=5日午後、奈良県御所市、加藤諒撮影
堺市北区に住民票がある梶本樹李(たつき)ちゃん(4)について、大阪府警は5日も捜索を続けたが、発見できなかった。父親で鉄筋工の卓(すぐる)容疑者(35)=府警が児童手当などの詐欺容疑で逮捕=は、樹李ちゃんが「昨年12月中旬に死に、今年5月下旬に遺体を捨てた」と供述しているという。しかし卓容疑者らの行動や周辺の証言が、供述に謎と疑問を浮かび上がらせている。
供述によると、樹李ちゃんは遺棄されるまで5カ月間、卓容疑者が遺体の状態で隠し続けたことになる。
府警によると、卓容疑者と、同じ詐欺容疑で逮捕された妻の千穂(ちほ)容疑者(32)は昨年12月末、大阪府松原市から堺市北区のマンションに転居。卓容疑者は樹李ちゃんの遺体を転居先に「持っていった」と話し、そこでは布団にくるんで隠したと説明している。
「妻には遺体を捨てたことも自宅に隠していたことも知らせていない」とする卓容疑者。5カ月間、妻と同居する3人の娘に気づかれぬよう、どのように隠したのかは、詳しく語っていないという。
今年5月下旬、遺体を捨てようと決めたのは「遺体のにおいが強くなったから」という。だがマンションを見回るオーナーの男性(66)は取材に対し、「当時、異臭はしなかった」と首をかしげる。
「遺体は1人で車で運び、大阪と奈良の府県境の山中に捨てた」とする卓容疑者。府警は、堺市のマンションや卓容疑者の車を検証したが、血液反応など、樹李ちゃんの存在を示す痕跡は確認されていない。
千穂容疑者は府警に、「夫が樹李をどうしたのか知らないし、どうなったのか聞かされてもいない」と説明。卓容疑者は「妻は(樹李ちゃんの)双子の妹の世話に追われていた。樹李はふだん自分が面倒をみており、いなくなっても妻は気づかなかった」と話す。府警の幹部は「(両容疑者の)供述には矛盾点があり、慎重に裏付け捜査をしたい」とする。