鹿児島5人殺害事件を巡る人物相関図
家の中で5人を殺した――。鹿児島県日置市の民家で親族ら3人が殺害された事件で、県警に逮捕された岩倉知広容疑者(38)は祖母(89)と父(68)も殺したと供述したという。遺体が埋められていたのは近所の空き地。無事を願っていた人に衝撃と悲しみが広がった。
山林から新たに2遺体 不明の親子か 鹿児島・3人殺害
孫の容疑者「祖母から注意、うるさく」 鹿児島3人殺害
「孫がそんなことをするなんて……。驚きで言葉にならない。ショックです」
岩倉知広容疑者(38)が、祖母の岩倉久子さん(89)と父親の岩倉正知さん(68)の殺害をほのめかしていることを知り、近所に住む80代女性は話した。
女性は、久子さんと家を行き来する関係にあった。久子さんは岩倉容疑者について「あの子は家に閉じこもっていた」と話していたという。
岩倉容疑者の伯母で、殺害された岩倉孝子さん(69)の知人女性(69)は、孝子さんが岩倉容疑者のことを心配していたのを記憶している。「働かず、家にこもりきりだったことを気にしていた。いつも『ともくんが、ともくんが』と言っていた」と話した。
行方不明となり、8日に遺体で見つかったとみられる久子さんについて、近所の人たちは、よく外出するなど元気な様子だったと話す。だが、昨年春ごろから両足が悪くなった。近所の80代の女性が最後に会ったのは3月中旬ごろで、自宅で杖をついて歩いていたという。
父親の正知さんも8日に遺体で見つかった。正知さんが勤務する日置市内の職場の関係者によると、2016年ごろから勤め始めたが、久子さんの介護などを理由にこの4月からは勤務時間を短くすることになっていたという。
ところが3月31日に出勤したのを最後に、次の出勤日だった今月4日は連絡なく欠勤した。正知さんについて「優しい性格で、真面目な勤務態度だった。これまで一度も休んだことがなく、どうしたんだろうと心配していた」と話した。
岩倉知広容疑者の父、正知さんと、祖母の久子さんとみられる遺体が発見された現場は、久子さんの自宅から約400メートル北東の山林だった。遺体が埋められていた空き地は山林を走る道路から、さらに小道に入った先にある。日中でも、行きかう車はまばらだ。
遺体の捜索は8日昼から数時間かけて行われた。空き地周辺は警察によって立ち入りが規制された上、生い茂る木々に囲まれ、詳しい様子はうかがい知れない。ジュラルミンケースを持った警察官や、捜査用のワンボックスカーが慌ただしく出入りした。
暗くなった午後6時すぎには警察官が献花台と花束をもって、空き地へ入っていった。
周辺には街灯もなく、久子さん方の近くに住む主婦(80)は「あの辺りは、抜け道として通る以外に地元の人もほとんど行かない」と話した。
捜査関係者によると、岩倉容疑者は「5人とも家の中で殺した。祖母と父の遺体は車で近くの山に運んで、自分で穴を掘って埋めた」と供述していた。
新たな2遺体の発見後、鹿児島県警捜査1課幹部が報道陣の取材に応じた。主なやりとりは次の通り。
――遺体の状況は。
山中の空き地に埋められており、顔が識別できないほど傷んでいた。
――容疑者の供述は。
「殺して遺棄した」と供述している。「車で運んだ」「(遺体は)自分で掘って、埋めた」などとも言っている。
――6日に殺害された男女3人も含め、5人をどこで殺害したのか。
「5人とも家の中で殺した」と供述している。
――動機は。
これから捜査する。
――供述の裏付けは。
客観的な証拠が乏しい事件ではある。供述と所要の捜査の結果、逮捕した。
――証拠が乏しいということは、凶器は見つかっていないのか。
押収していない。