日本民間放送連盟の井上弘会長(TBSテレビ会長)は9日、総務省が2020年までの実現を目指しているテレビ番組のネット同時配信について、「民放は技術の進歩に積極的に対応し、常に乗り越えてきた」と述べ、前向きに取り組む考えを示した。民放連は地方局への配慮などから同時配信に慎重だったが、大きくかじを切った。
全国の放送局が集まる民間放送全国大会であいさつした。井上氏はカラー放送化やデジタル化など過去の例を挙げ、ネット配信でも「一層の努力をしないと、次の世界は開けない」と強調した。一方、総務省に「同時配信でNHKが一層巨大化しないよう留意してほしい」と注文もつけた。
地方局は東京のキー局と同じ番組が多く、キー局の番組が全国で同時配信されれば視聴者を失い、経営難に陥りかねない。それでも井上氏が前向きな姿勢を打ち出したのは、ネット動画サービスに視聴者を奪われつつあることへの危機感や、スマートフォンの位置情報などを使って地域ごとに見られる放送局を制限する技術にめどが立ちつつあることが理由とみられる。
NHKの籾井勝人会長は同日の定例記者会見で「NHKは放送法で今は同時配信できないが、民放はできる。(巨大化するという懸念は)率直に言ってわからない」と井上氏の懸念を否定。「粛々と我々がやれることをやる」と話した。
総務省の有識者会議は、NHKの同時配信を認める法改正と、その際の受信料のあり方をセットで議論する方針。だが籾井氏は「ネット配信が許された場合、我々が独自の料金体系をつくる。あなた任せというわけにはいかない」とした。(上栗崇)