ベトナム政府が、日本とロシアの企業が建設を担う南東部ニントアン省の原子力発電所計画の白紙化に向け、協議を始めることが9日わかった。現地メディアが報じた。ベトナム共産党は厳しい財政状況のため、原発計画の見直しを政府に指示していたという。日本初の原発輸出事例となる見通しだったが、白紙に戻る可能性が高くなった。
ベトナム国会関係者は同日、朝日新聞の取材に「延期ではなく計画廃止」に向けた協議を始めると明らかにした。
ベトナムの原発計画は日本が民主党政権下だった2010年に合意。第一原発(2基)をロシア、第二原発(2基)を日本が担う計画で、当初は1基目を14年にも着工予定だった。しかし、11年の東京電力福島第一原発の事故をうけ安全性を見直し、海岸沿いだった設置場所を数百メートル内陸方向へ移動する内容に変更。その後も計画が遅れ、今年3月には「最初の稼働が28年になる」としていた。
今年、新体制になったベトナムでは、原発計画を進めてきた親日派のグエン・タン・ズン首相が退いた。建設費用が当初予定の2・7倍の270億ドル(約2兆8千億円)になる試算も明らかになり、新体制下で、原発の安全性や財政面での不安が議論になったものとみられる。10日にも産業貿易相が報告書を国会に提出し、計画の白紙化に向けた協議を始めるという。(マニラ=鈴木暁子)