明治神宮大会でもぎりぎりまで球を見極めていた日大の千葉
第47回明治神宮野球大会に24年ぶりに出場した日大(東都)には、高校時代の苦い思いをはね返した選手がいた。
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ぱっちりとした瞳に、屈託のない笑顔。丸刈りではなくなったが、人なつっこそうな印象は当時のままだ。「身長はあの頃と変わってません。髪が伸びた分、少しだけ大きくなったかもしれませんね」。外野手の千葉翔太(3年)は、そう言って笑った。
その名を覚えている高校野球ファンもいるだろう。花巻東高(岩手)の2番打者だったのは3年前。2013年夏の甲子園だ。
「カット打法」と聞けば、さらに思い出す人もいるだろう。身長156センチの体を小さく丸めて構え、バットを短く持つ。球をぎりぎりまで引きつけ、きわどい球をことごとくファウルにした。
準々決勝の鳴門(徳島)戦では、一人で投手に41球を投げさせて4四球を選んだ。ただ、試合後、この打法が高校野球特別規則では「審判がバントと見なすこともある」と指摘された。
2ストライク後のファウルが「バント」と判定されると、スリーバント失敗で三振となる。準決勝ではファウルを一球も打たず、無安打。チームも敗れ、取材にも答えられないほどに泣き崩れた。
あれから3年。千葉には笑顔が戻っていた。「大学に入った時、先輩方がよく話しかけてくださり、すぐになじむことができました」
再び野球に打ち込んだ。「一番の武器」という守備に磨きをかけ、学生野球の最高峰とも言える東都リーグを制したチームで先発に名を連ねるまでになった。
千葉は言う。「打撃の形は変えていません」と。
当時、「カット打法」という呼び名が一人歩きしたが、ぎりぎりまで球を引きつける目的は「ファウル」ではなく、「出塁」だ。
14日の準々決勝と15日の準決勝に9番右翼手で先発。14日は4打席で1安打2四球。チームが敗れた桜美林大との準決勝でも4打席で3四死球と、「上位打線につなぐ」という自らの役割を果たした。
準々決勝では1本もファウルを打たなかった。一方で、準決勝の第2打席は追い込まれてから4球ファウルで粘った。ファウルは出塁までの過程なのだ。ただ、ときに球速150キロを超える大学野球の世界で、それは口で言うほど簡単なことではない。
「野球は身長でするものじゃない」。磨きをかけた高度な技術で、千葉がそれを証明している。(山口史朗)