1980年代のフレディ・マーキュリー。70年代の妖しさはマッチョなスタイルに変わっていった(C)ユニバーサル ミュージック
不世出の英ロックボーカリスト、フレディ・マーキュリーの生誕70周年と没後25年が今年巡ってきた。才能を開花させたバンド、クイーンのライブ演奏がCD化されたり、命日に合わせたイベントが開かれたりと、遺業を慕う声は今なお絶えない。その妖気漂う異形は「不在の在」となって一層、人々の心をとらえる。
今月、クイーンによるBBC放送のスタジオライブ音源がCD化された。フレディの声の、そのため息まで耳に運ばれてくる。命日の11月24日と翌25日、東京・八重洲のオンキヨーのショールームに献花台が置かれ、CD試聴会などが予定される。
レディー・ガガたちからも敬意を集めるフレディ。愛され続けるのには理由がある。
黄色いジャケットのきてれつな姿や、ステージ上で腕立て伏せをする突拍子もないパフォーマンスが魅力の一つだろう。
その一方で、卓越した歌声が燦然(さんぜん)としている。9月、現在のクイーンが歌手アダム・ランバートとともに来日公演。代表曲「ボヘミアン・ラプソディ」などで、ライブ映像のフレディとアダムが掛け合う演出だった。アダムも強力な声だが、それを上回って芳醇(ほうじゅん)に奏でられるフレディの声。不思議な「不在の在」が客席に感動を広げた。
音楽評論家の今泉圭姫子(けいこ)さんは言う。「活動の前半は、ロックとクラシックの融合を歌ものとして成し遂げた。後半はオペラに接近する。声に品があるから、他の人では歌い切れない」
潤んだ艶(つや)やかさ、鋭く…