米国務省は23日、中国・広州の米国総領事館に勤める外交官が「異常な音」を聞き、脳に軽い損傷を受けたと発表した。原因は不明だが、在北京の米国大使館は、中国在住の米国人向けに注意を喚起した。キューバでも2016~17年に米外交官が同様の症状を訴えているが、関連は分かっておらず、国務省は広州に医療チームを派遣する。
国務省によると、外交官は昨年末から4月にかけて様々な症状を訴えた。米国で検査したところ、18日に脳振盪(しんとう)のような軽度の外傷性脳損傷と診断された。ほかの被害は確認されていないが、北京の米国大使館は「異常な音を聞いて、聴覚などに異変を感じたら、音源を探さずに音が聞こえないところまで退避するように」と注意を促した。
ポンペオ国務長官は23日の議会公聴会で「ハバナの米国人に起きた症状と非常に似ている」と発言した。キューバでは、複数の米外交官や家族が聴覚障害やめまい、頭痛や吐き気などを訴え、ほとんどの外交官を退避させる事態になった。キューバの事件についての調査報告書は、来週ポンペオ氏に提出されるという。
これに対し、訪米中の中国の王毅外相は記者会見で、中国側の調査では「音波」が誰によるものかは分かっていないとしつつ、「個別の事象が大きくなり、複雑化し、政治問題化することは望まない。中国は法にのっとり、すべての外国人、特に外交官を守る」と述べた。(ワシントン=香取啓介)