トライアウトで登板した中崎雄太。右足をインステップする変則フォームだ
■スコアの余白
12日、甲子園で合同トライアウトがあった。西武から戦力外通告を受けた中崎雄太は、弟の言葉に背中を押され、この場にやってきた。まだ25歳の左腕だ。
スコアの余白2016
「戦力外を受けたその日、弟から『野球を続けてくれ』とラインが入ったんです。それで辞められないな、と」。弟とは広島で抑えを務める翔太だ。「小学生の頃から弟は自分の背中をみてきた。プロに入っても尊敬してくれていた。かっこわるい終わり方は出来ないな、と」
鹿児島出身。ともに宮崎の日南学園高に進んだ。兄は2年夏、甲子園で投げた。2学年下の弟は甲子園出場経験がない。兄はドラフト1位で西武に入団し、弟は広島の同6位だった。
雄太はプロ8年間で登板15試合、0勝。左打者封じに活路を求め、今季から横手投げに変えた。24歳の翔太は抑えとしての地位を固め、今季は34セーブ。25年ぶりのリーグ優勝を決めた瞬間もマウンドにいた。
兄弟の明暗は分かれてしまったが、弟への思いは優しく温かい。「ずっと一緒に野球をやってきた弟が結果を出した。家族として、素直にうれしい」。うらやましさは? 「ないです。努力が実って弟は活躍している。うれしい気持ちしかないんです」
トライアウトでは左打者2人を含む打者3人を三振、三振、右翼への飛球に封じた。かなうなら、まだ弟と野球を続けたい。思いがこもるマウンドだった。(竹田竜世)