トルコの与党・公正発展党(AKP)は10日、現在は国家元首として象徴的地位にとどまる大統領に、行政の権限を集中させる憲法改正案を国会に提出した。実現すれば、AKPの事実上の指導者であるエルドアン大統領が、名実ともに国のかじ取り役を担うことになる。協力姿勢を示している極右政党を除いて、野党側はエルドアン氏の独裁につながると猛反発している。
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改憲案では、大統領を行政のトップと定め、補佐する副大統領職(1~2人)を新たに設置し、首相府を撤廃させる。実現すれば、トルコは現行の議院内閣制から、大統領が大きな権限を持つ「実権型大統領制」へ移行することになる。
現行憲法では、大統領は国家元首として政治的中立を求められ、政党を離党し、国会議員も辞職しなければならない。エルドアン氏も2014年夏に大統領当選後、AKPを離党し、国会議員も辞した。だが、改正案では大統領は政党との関係を持つことができるとしており、政党の役職も兼務できることになる。
さらに、現在は大統領を議長とする閣僚会議に権限がある非常事態宣言の発出も、大統領に与えるとした。このほか、政令を出す権限や、副大統領、閣僚、上級国家公務員を任命する権限も大統領に与える。
改憲案では大統領権限強化の他、国会議員の定数を現行の550議席から600議席に増やす▽25歳以上とする国会議員の被選挙権を18歳以上に引き下げる――などを盛り込んでいる。
憲法改正は、国会議員の3分の2(367議席)以上が賛成し、大統領が支持すれば実現する。3分の2に届かなくても、5分の3(330議席)以上の賛成で大統領が国民投票にかけることができ、国民の過半数の賛成で可能になる。
AKPは現在317議席。改正には野党の協力が不可欠だ。すでに野党第3党の極右政党「民族主義者行動党」(40議席)の協力を取り付けており、国民投票にかけられる可能性は高い。AKP幹部は国民投票について、早ければ来年春にも実施されるとしている。(イスタンブール=春日芳晃)