築130年の町屋・森本襖表具材料店の居住部分。熊本地震の影響で傾いたため筋交いで補強されていた。手前の部屋は雨漏りのため畳が取り除かれていた=2日、熊本市中央区、福岡亜純撮影
熊本城周辺で「職住一体」の伝統様式を残す、明治から戦前にかけての町屋が次々と解体されている。熊本地震から8カ月。被災復旧への特別な補助がなく、修復する職人の手も足りない。町並み保存に取り組む人たちは、所有者らと連携して「城下町」の消失を食い止める方法を模索する。
特集:熊本地震
■倒壊「危険」の赤紙
熊本城から徒歩20分。熊本市の「古町」にある森本襖(ふすま)表具材料店は1886(明治19)年に建った町屋だ。木製の引き戸を開けると、土間に接客用の上がり、棚には表具の素材が詰め込まれている。熊本地震で壁や柱にひびが入り、倒壊防止の筋交いが渡されている。
店は約5・5メートル四方だが、奥行きは約50メートルあり、居間や中庭、倉庫へと続く。建築や生活文化の研究者らがたびたび訪れ、雑誌にも紹介された。風が通り、中庭では季節の果物がとれる。
自慢の住まいだったが、店主の森本多代さん(58)は今月末に解体を申請する。建物が傾き、応急危険度判定は「危険」の赤紙。近くのマンションで過ごしながら毎日様子を見ていると、瓦は徐々に落ち、室内が雨風で荒れていく。
解体には公費が出るが、修復には多額の費用がかかる。毎日、町屋に来て片付けをしながら、つい、「ごめんね」とつぶやく。
「呉服町」「魚屋町」などの地…