日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉は、目標の年内の大枠合意が難しくなった。交渉のため来日していたEUのペトリチオーネ首席交渉官は17日、都内で会見し「いくつかの論点で思っていた以上に妥協が難しい状況だ」と述べた。12日からの首席交渉官会合が、双方の溝が埋まらないまま終了したことを明らかにした。
11月の米大統領選の結果、環太平洋経済連携協定(TPP)の発効が絶望的になり、日本は日EU交渉に期待をかけてきた。安倍晋三首相が「年内の大枠の合意をめざす」と繰り返していただけに、政権には大きな打撃になりそうだ。
交渉では日本はEUに、自動車に10%、テレビに14%かかる関税の即時撤廃を要求。逆に、EUはチーズや豚肉、ワインなどの関税引き下げを求めていた。だが、5日間の交渉では一致点を見いだせなかった。
ペトリチオーネ氏は今後の交渉について「来週以降も合意に向けて作業を進め、来年初頭にも残る課題の解決を目指したい」と述べた。だが、来年は、フランス大統領選など欧州主要国で重要な選挙があり、欧州側の政治決断は難しくなる。日EU交渉は動かなくなる可能性もある。
EUは圏内人口5億人、世界の国内総生産(GDP)の2割を占める巨大市場。日本にとっては中国、米国に次ぐ貿易相手で、総輸出入額の10%程度を占める。日EUは2013年に交渉を開始し、年内合意を目指してきた。(野口陽、鯨岡仁)