アスファルト舗装されたばかりの道がカーブしながら山頂まで続いている。そして標高約700メートルの山頂に着き、見下ろすと、30‐40センチの高さの茶の木がきれいに並んでおり、その中で作業員約20人がやわらかい茶葉を摘み、それを背中のカゴに入れている。これは、春の終わりごろになると、湖南省古丈県の人里離れたこの地で目にすることのできる景色。以前は荒れ果てていた山には今では、美しい緑の景色が広がっている。
四川省の青川県や貴州省の普安県、沿河県でも、春になると同じような茶園の景色を見ることができる。その茶の木1本1本は、浙江省安吉県黄杜村との絆の証だ。
ここ数年、黄杜村は古丈県など貧困県4県の貧困村34村に白茶「白葉一号」の苗1900万株を寄贈し、約358ヘクタールに植えられてきた。そして、寄贈を受けた地域の貧困者登録されている人の所得が増え、貧困を脱却できるようにサポートしてきた。
白茶は、降雨量や積算温度、土質、標高などに一定の要求があり、本当の意味で貧困支援の効果を発揮するためには、それを寄贈する地域を厳選しなければならない。2018年6月、中国農業科学院茶葉研究所や浙江省茶葉集団などの技術者は中国中・西部地域を訪問して、数万キロの旅をし、最終的に白茶の寄贈先として3省4県の貧困村34村を選んだ。
2018年10月、黄杜村の茶農家が寄贈した茶の木の苗が続々と34村へと届けられた。青坪村の党組織村党支部の王永明書記は、茶の木の苗が届いた日、村は春節(旧正月)の時のような盛り上がりとなったことをはっきりと覚えているという。第一陣として100万株の白茶の木の苗が積み込まれた大型冷蔵車3台が止まると、村の人数百人が、すぐにそれを降ろし、時を移さずして植えたという。
もう一つの寄贈先である翁草村もこの機会を非常に大切にしている。翁草村の欧三任第一書記は、「村の茶の木を植えた全ての農家を対象に技術研修を行い、トウモロコシの栽培に慣れた村民に茶の木の苗を植える方法を学んでもらった。茶葉産業は多くの貧困者に職を提供した」と話す。
湖南省湘西土家(トゥチャ)族苗族自治州古丈県翁草村には約180世帯、約800人が暮らし、伝統農業を行う苗族の典型的な集落となっている。画像は茶摘みの季節を迎えた苗族の集落。陳碧生/人民図片
古丈県で植えられた茶の木の苗は何度も自然災害に見舞われてきた。2018年の冬、南方エリアでは珍しい大雪が降り、一部の茶の木の苗が冷害に見舞われた。そして、2019年春に植え直された茶の木の苗は、今度は7月に連日の大雨に見舞われた。欧三任第一書記は、「安吉県の技術者がすぐに来てくれた。そして、村民が茶園を整え直すことができるようサポートしてくれた。2回の自然災害で、合わせて30万株以上の茶の木の苗を植え直した」と説明する。
安吉県は、寄贈を受けた村へとアフターサポートや技術指導を継続的に強化している。そして、ここ2年で、技術者を42回に分けて延べ275人派遣してきた。各関係者が心を込めて世話しているおかげで、遠い地から送られた茶の木の苗がしっかりと根付くようになっている。
翁草村の村民・龍星美さん(40)は、青々とした茶の木の苗を見て、笑みを浮かべる。夫は出稼ぎに出ており、龍さんは、子供だけでなく、寝たきりの兄、70歳を過ぎた母親の世話もしなければならず、翁草村の深刻な貧困世帯だった。