焼け落ちた「加賀の井酒造」の酒蔵=23日、新潟県糸魚川市、朝日新聞社ヘリから、堀英治撮影
「やっぱりだめだったか」。老舗酒造会社「加賀の井酒造」第18代蔵元、小林大祐(だいすけ)さん(34)は24日、自社へ向かったが、敷地内に並ぶ酒蔵や事務所はほぼ焼損していた。
住民ら、避難勧告区域に一時立ち入り 糸魚川大火
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創業は江戸時代の1650(慶安3)年。加賀前田藩が参勤交代時に置いた本陣があったことでも知られている。
暮れが迫るこの時期、本来ならば発送作業が最盛期を迎えているはずだった。県内外の酒店へ、4合瓶を連日1千本以上。そのほかにも、新春に出荷する純米吟醸酒「加賀の井」などの仕込み作業が進んでいた。
すぐに戻れるだろうと、糀(こうじ)の上に布をかけて従業員6人と避難したものの、「かなり厳しい状況」と覚悟はしていた。
火災後、加賀の井の味を愛する客から問い合わせや、全国から励ましの声がひっきりなしに寄せられた。
「本陣があったこの地で酒蔵を再建したい」と話す小林さん。どんな手順で再建したらよいのか、戸惑いもある。「火災は予期しないことだったが、一つずつやっていきたい」と自らに言い聞かせるように語った。(河畑達雄)