米ハワイ州立ラドフォード高校で使われている米国史やハワイ史の教科書=同州ホノルル、高野裕介撮影
安倍晋三首相とオバマ米大統領が、27日(日本時間28日)に慰霊に訪れる米ハワイ州の真珠湾。ここで75年前、日本軍が米軍基地に奇襲をかけ、日米が開戦した歴史を、現地の学校ではどのように教えているのか。教師らに聞くと、生徒に考えさせる授業を進めていた。
「真珠湾攻撃を学ぶのにベストの教材が、ここにはある」。真珠湾から約1キロの州立ラドフォード高校で、米国史などを担当する教師ウィリアム・サンキーさん(49)はこう話す。撃沈された戦艦アリゾナの上に設けられた犠牲者の追悼施設「アリゾナ記念館」のことだ。生徒を連れて行き、攻撃の様子を伝える博物館などを見学させている。
ハワイ州の公立学校では、一般的に14~16歳の生徒が、米国史か世界史の授業で真珠湾攻撃を学ぶ。教科書の検定制度はなく、各校が独自に教科書を選んでいる。
ラドフォード高が使う米国史の教科書「アメリカン・ページェント」は、メジャーな教科書の一つだ。真珠湾攻撃前の外交交渉などの経緯を説明した上で、「米高官の誰も、ハワイを攻撃するほど日本が強く、無謀であるとは信じていなかったようだ」と記述。当時のルーズベルト大統領の「不名誉な日」という言葉を引用し、米軍艦が沈没する様子を写したカラー写真を掲載している。
ただ、サンキーさんは「教科書は教材の一つにすぎない」と言う。授業では退役軍人の経験を伝える記事を読んだり、ルーズベルト大統領のスピーチが記された公文書を使ったりと、様々な情報を元に生徒が考えられるよう努めている。「米国にとって必要な戦争だったか」「日系人の強制収容所は正当化されるか」などの問いを投げかけ、グループ討論もさせている。
サンキーさんは「生徒は将来、米国が戦争すべきか否かを有権者として決めるかもしれない。真珠湾についてしっかり学ぶことは、そんな判断力を養うことにもなる」。安倍首相の訪問については「かつての戦争を乗り越え、米国と日本の関係が深まったことを生徒が肌で感じられるようになるだろう」と期待する。
ハワイ州・オアフ島中部にある…