ザアタリ難民キャンプの「シャンゼリゼ通り」。舗装されずに砂ぼこりが舞うが、人やロバが行き交い活気にあふれる=昨年12月上旬、ヨルダン北部、渡辺丘撮影
純白、ピンク、オレンジ、青……。プレハブ造りの店のドアを開けると、明るい色のウェディングドレスが目に飛び込んできた。
ここは「シャンゼリゼ通り」。凱旋門(がいせんもん)から延びるあのパリの通りではない。約3千キロ離れたヨルダン北部・ザアタリ難民キャンプ。約8万人が暮らす世界最大のシリア難民キャンプの中でも、とりわけ人々に親しまれる商店街があった。
2011年、シリア内戦が始まると、国境から約10キロ、幹線道路からほど近い場所に難民が逃れてきた。砂漠の地に国連の支援でテント、次第に仮設住宅が増えると、難民が食料や日用品を売り買いする市場が生まれた。
ここにフランス系の病院ができて、援助関係者らが「シャンゼリゼ通り」と呼び始めたという。今ではキャンプ全体に約2500の店が軒を連ねる。
生鮮食品店の店先に新鮮な野菜や果物が並ぶ。焼きたての丸いパンや揚げたての豆製コロッケの香ばしい匂いが鼻先をくすぐる。
金のアクセサリーを売る店、インターネットカフェやゲームセンターまである。「ロールスロイス」と銘打った黄金色の自転車を売る店も現れた。シリアでは金色は豊かさを表す。
キャンプ内で電気は1日9時間…