板谷由夏さん=山本倫子撮影
「だんだん口角が下がってきて……」。どんよりとした表情で話すのは、「女の中にいる他人」(BSプレミアム、日曜夜10時)に出演している板谷由夏さん。いつも笑顔で、快活な印象なのに、なぜ? 演じている役柄が、相当な女性のようです。
――演じている伊東美智子は、10年前の裁判で証人になってくれなかった旧友の田沼百合子(瀬戸朝香)を恨み続け、再会後に復讐(ふくしゅう)の機会をうかがう女性です。
美智子は、恨みだけで動いていきますから。人に対する怨念が、こんなにヘビーなんだと分かり、演じてみて結構きついです。とにかく、ネガティブな部分をずっと持ち続けないといけないというのがしんどくて……。
――美智子は転落した人生を送り、一方の百合子は一見、幸せそうな人生を歩んできたように見えます。
証人になってくれなかったことで、ずっと恨んでいたと思うんです。そして再会したことで、ワーッと一気に火がついちゃったんじゃないでしょうか。悲しい女ですよね。初回を見て、「かわいそう、この人」って(笑)。もっとポジティブな方向で生きていくことがあれば、よかったのにねって、気の毒になりますよねえ。
――確かに、前向きではない。
久しぶりに不幸で、根っこにどろどろとしたものを持った女性を演じていると、だんだん口角が下がってきて……。私自身もだんだんネガティブになってくる。正直、早く役から抜けたくて(笑)。撮影を2カ月もやってきたので、彼女には愛情も愛着もあるんです。彼女の気持ちも「分かろう、分かろう」と、そればかり考えてやってきたけど、もうなんかねえ……。つくづく思うのが、ひとに恨みを持っちゃいけないなあと。演じきって、早く美智子を成仏させてあげたい。