空港ロビーにはクリスマスを前に、ゴマフアザラシのはくせいとサハリン地ビールのツリーが飾られた=2006年12月、北海道稚内市の稚内空港
今回も北海道稚内の話。
小泉信一の「さあ、もう一軒」
北緯45度31分。「日本最北端の碑」がある宗谷岬からロシア・サハリン(旧樺太)までは43キロしかない。「ここから先はヨーロッパ」と地元の人が言う。
たしかにここは「国境の街」だ。カニを運んできた運搬船の乗組員などロシア人がよく買い物をしているし、温泉にもやってくる。港近くにはロシア料理を出すレストランもある。市役所には「サハリン課」もあり、ロシア語が堪能な職員が控えている。
極めつきは、稚内空港ロビーの看板だろう。「ここまで来たらサハリン地ビール」と書いてある。
初めて見た人はびっくりするのではないか。「はるばる来たなあ」と旅情に駆られるだろう。しかもロシアの美しい女性がグラスを手に笑みを浮かべているのだから、飲まないわけにはいかない。
冷戦崩壊後の1990年代後半からサハリンとの経済交流が活発になり、定期航路も復活した稚内。ビールも輸入され、販売もされるようになった。
看板は、輸入販売を手がける市内のスーパー「ユアーズ」(今村光壹社長)が製作し、2003年に設置した。「国境の街をPRしたい」というのが理由である。赤を基調にしたデザインで縦76センチ、横3・36メートル。モデルは、サハリンから稚内に流通業の実習に来ていたロシア人女性を起用したそうである。
製造元は、サハリンの港町コルサコフ市にある醸造所。ドイツ人技術者の指導のもとで生産しているという。日本のビールに比べるとやや淡泊に感じてしまうが、独特の風味はある。私が稚内に勤務していた10年前は、サハリン地ビールを提供している居酒屋が何軒かあったが、いまはどうなっているのだろうか。
さて、日本最北の稚内ならではの思い出をひとつ。毎年2月、楽しみにしていたイベントがあった。地元の料理飲食店組合が主催する「寒寒(かんかん)ドリンクラリー」である。ルールは、90分以内にスナックや居酒屋など5軒をはしご酒してスタンプを押してもらうこと。ラリー終了後は、現金や豪華賞品が当たる抽選会が待っていた。
「日本のてっぺんで、はしご酒…