2013年2月のパナソニック戦で相手の突進を防ぐ青木(左から2人目)
タックルの代わりにタグと呼ばれる腰ひもを奪い合うタグラグビーの「サントリーカップ第13回全国小学生選手権」(日本ラグビー協会主催、朝日新聞社など後援、サントリーホールディングス特別協賛)が2月18、19日、東京・アミノバイタルフィールドで開かれます。大会に協力するトップリーグ・サントリーサンゴリアスの元日本代表FWで、タグラグビーの普及に積極的な青木佑輔選手(33)が、競技の魅力を語ってくれました。
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――地域のタグラグビー教室などで講師を務めているそうですね。
「将来、ラグビーの指導者をめざしているので、子どもたちにタグラグビーを教えるのは勉強になります。タグラグビーの存在を知ったのは大学時代。幼い頃にこの競技と出あえた子どもたちは幸運ですよね」
――なぜ?
「ある時はステップを切りながら鬼ごっこのように逃げ回る。またある時はボールを運ぶスペースを探し、パスをつなぐ。空いている場所を見つける感覚、相手をかわす身のこなし、様々なスポーツの要素が詰まっていて、自然と養われます。だから、中学、高校と進んで他競技に転向したとしても、タグラグビーで学んだことは必ず生かされます」
――指導で強調することは?
「『当たり前』は『当たり前』じゃないということ」
――どんな意味ですか?
「自分が次にどうプレーしたいか、何を考えているのか。チームメートには理解されていて当然と思い込んでいる子が意外に多い。でも、実際に言葉にして伝えなければ相手はわかってくれないものです。ここにパスがほしいんだよ、近くに走り込んでいるよ、と声をかけ合わなければ、チームプレーは成り立ちません。意思疎通が大切なのはラグビーと同じです」
――進学後はラグビーに挑戦したいと考えている小学生も多いと思います。
「タグラグビーに比べ、ラグビーは『型にはまった』競技といえるかもしれません。個々の役割分担が明確で、僕はフッカーなのでスクラムを組まなきゃいけないし、ラインアウトではボールを投げ入れる役目も担う。それ以外の局面では全くボールに触らない試合もある。ただ、それでも自分を生かせるのがラグビーの魅力だとも思います」
――ボールに触れなければ、楽しくないのでは?
「僕も高校時代まではボールを持って突破するタイプでした。しかし、周りのレベルが高くなるにつれ、自分の突破力では通用しないと気づいた。なので、ボールを持たなくてもチームの役に立つプレー、タックルや、密集で体を張って周りを生かすプレーを磨きました。格好良く言えば『自分が生きる道』を見つけたのです」
――だから、ベテランと呼ばれる33歳になったいまも第一線で活躍できるのですね。
「社会生活にも通じる部分があるのではないでしょうか。年齢を重ねれば重ねるほど、責任も、仕事上の制約なども増えます。できることとできないこともわかってくる。その中で周りとコミュニケーションを図りながら、自分をどう生かすか。楕円(だえん)球を通して人生を学べる。僕は、そう感じています」
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〈あおき・ゆうすけ〉 1983年、東京都出身。東京・国学院久我山高から早大を経て2006年にサントリー入団。日本代表として2011年ワールドカップ・ニュージーランド大会に出場。ポジションはスクラム最前列の中央を担うフッカー。豊富な運動量、密集戦での献身的なプレーが持ち味。