1月31日、一時入国禁止の米大統領令に反対するため、ロサンゼルス空港に集まった人々=ロイター
中東・アフリカ7カ国からの入国を一時禁止するトランプ米大統領の大統領令をめぐり、混乱が続いている。トランプ政権は国境管理強化の方針を崩さず、「禁止ではなく休止」と強弁するなど批判をかわす姿勢を見せる。身内のはずの国務省で反対署名が広がり、国連事務総長が連日批判を表明するなど、国内外で反発がやまない。
特集:トランプ米大統領
米外交を担う国務省では「米国の主要な価値観、憲法に反する」として、大統領令に反対する署名運動が活発化している。CNNなどは31日、抗議文書に約900人の署名が集まり、シャノン国務長官代行に提出されたと伝えた。昨年6月のオバマ政権のシリア政策を批判した文書の署名人数は51人で、今回は異例の規模となった。
署名をした外交官の男性は取材に「大統領令に賛同している外交官がいるとは聞いたことがない。一線を越えているからだ。署名をしなくても、非常に高い割合の職員が反対しているだろう」としている。
署名は、政府の政策に対し、職員が建設的な異論を表明する権利を認める正式な内部制度「ディセント・チャンネル」を使って行われた。国務長官ら上層部が受け取り、職員の懸念などを把握することが目的とされる。報復は受けないと規定されているが、ホワイトハウスのスパイサー報道官は30日の会見で、異議を唱える外交官らは退職すべきだとの見方を示している。
反発は国内外で強まっている。国連のグテーレス事務総長は31日、国境管理が「あらゆる形態の宗教や民族、国籍での差別に基づいてはならない」との声明を出し、「世界で最も発展した国々が国境を閉ざしている」と演説した前日に続いてトランプ政権を批判。ニューヨーク、マサチューセッツ、バージニアの東部3州の司法長官は31日、ワシントン州の司法長官が提訴していた、大統領令の無効を求める訴訟に参加したことを発表した。(ワシントン=杉山正)