愛知医療学院短大で働いている女性(手前)。作業を終えて職員に報告していた=愛知県清須市
愛知医療学院短大(愛知県清須市)の作業療法の研究グループが、精神疾患に悩まされた人たちを学内の職場に受け入れている。障害者雇用の中でも精神障害者の雇用は進んでおらず、精神疾患の経験者も含め社会復帰のきっかけにしようという取り組みだ。精神障害者の就職に向けて、研究者らは企業の意識改革や、それにつながる施策の必要性を指摘している。
同短大は2015年10月から「尾張中部障害者就業・生活支援センター」と連携。就職支援を求めてセンターに登録している人を働き手として受け入れ、社会復帰につなげるプロジェクトに取り組んでいる。
同短大で働いているのは2人。仕事内容や時間は、本人と相談して決めている。
16年夏から月に2度のペースで通う女性(22)は高校卒業後に進んだ神奈川県の専門学校で新たな環境になじめず、すぐに学校をやめて愛知へ帰郷。人混みで気分が悪くなるようになって外出できなくなり、「社交不安障害」と診断された。
今の仕事は書類を扱う事務作業が主だが、パソコン業務や清掃などを体験し、自分に合う仕事が何かを探っている。16年10月からは、不登校の人が集うカフェでアルバイトも始めた。
「人の視線が怖くてコンビニでお金を支払うのにも緊張していたけれど、短時間だけ働いて『これなら自分はできるんだ』という体験を重ね、続けられたことが自信になった。将来は、私のような人を手助けできる仕事に就きたい」と希望を膨らませる。
プロジェクトを始めたのは同短大リハビリテーション学科の港美雪教授(55)=作業科学。以前勤めていた吉備国際大学(岡山県)でも同様のプロジェクトで精神障害者の就労支援に取り組んだ。港教授は「働き方を工夫すれば、精神障害のある多くの人が働くことができ、自信を回復できる」と、岡山での取り組みを振り返る。