記載台で投票用紙に記入する生徒たち=東京都足立区花畑7丁目の足立特別支援学校、円山史撮影
知的障害のある生徒に投票方法を知って欲しい――。東京都立足立特別支援学校(足立区花畑7丁目)で、投票所で実際に使われている機材を使い、本当の選挙とほぼ同じ形で生徒会選挙の投開票が行われた。区選挙管理委員会が全面協力し、職員も知的障害者にどんな配慮が必要かを学んだ。
生徒会選挙は14日にあった。会長に1人、副会長と書記(定員各2人)に3人ずつが立候補。高等部普通科の1~3年の生徒約150人が演説を聞いた後、投票が始まった。
投票方法は障害の程度で分かれる。字を読み、書くことなどができる生徒は通常と同じように投票用紙を受け取り、記載台に向かった。障害の程度が重い生徒は、候補者の顔写真と名前を書いた紙から投票したい人を選んで、紙を投票箱に入れた。なかなか選べなかったり、列の途中で立ち止まったりする生徒もいたが、職員はせかさずに様子を見守った。担当教諭は「実際の投票のような雰囲気を知ることができたからか、表情がいきいきとしている」という。
区選管と協力した生徒会選挙は、昨年から始まった。選挙権年齢が引き下げられ、主権者教育を考えた同校が、区選管に問い合わせたのがきっかけだった。高橋馨校長(52)は「特別支援学校でここまで本格的に選管と協力した取り組みは珍しい」と話す。
昨年4月に施行された障害者差別解消法では、行政に、正当な理由のない障害者へのサービス拒否や制限を禁じ、過度な負担にならない範囲で対応する「合理的配慮」を義務づけている。区選管は「実際のケースに近い形で、配慮のあり方を学びたい」と職員約10人が参加した。
区選管によると、実際の選挙では、字が書けない人が投票する場合、投票したい人の名前が示されれば、職員が代筆するなどしている。今回のように写真を指さして投票できるようにするのは「現実的に難しい」とする。「知的障害者が誤って別の紙を投票箱に入れてしまわないよう、立会人は丁寧に目を配る必要があることがわかった」という。
高橋校長によると、この選挙を経験した卒業生が、昨夏の都知事選では保護者と一緒に投票できたという。高橋校長は「知的障害のある子どもたちは、初めて訪れる場所や慣れない状況に動揺することが多い。投票の方法や投票所の雰囲気を事前に知っておけば『自信を持って行ける』という意欲につながる」という。「どんな人でも投票できる仕組みが広がってほしい」と願う。(円山史)
有料会員に登録すると全ての記事が読み放題です。
初月無料につき月初のお申し込みがお得
980円で月300本まで読めるシンプルコースはこちら