女子マススタートで優勝した高木美帆(中央)。左は2位の佐藤綾乃、右は3位の金ボルム(韓国)=遠藤啓生撮影
23日の札幌冬季アジア大会スピードスケート。「チーム日本」の作戦が完璧にはまった。女子マススタートの高木美帆(日体大)と佐藤綾乃(高崎健康福祉大)の余裕のワンツーフィニッシュを生んだのは、「おとり」になった姉の高木菜那(日本電産サンキョー)の巧みな滑りだった。
平昌五輪の新種目。大人数が一斉にスタートしてコースを16周し着順を競う。他の選手を風よけに利用する戦略が問われ、個人種目ながら同じ国の選手同士が協力して滑る。スピードスケートでは異色の種目だ。
10人でのレース、2周目で高木菜が先頭に出た。今月の世界距離別選手権(韓国)で2位の高木菜は「他の国の選手がマークするのは自分だと思っていた」。予想は的中。同選手権1位の金ボルム(韓国)らがぴったりと後ろについた。
3周目、日本の3人が勝負に出た。高木菜がインコースに隙間を作ったのを合図に、スピードに乗った高木美と佐藤が一気に抜け出た。2人は前後を入れ替わりながら差を広げていく。
一方の高木菜は集団の先頭に残り、他の選手を牽制(けんせい)してペースを落とす。最後は集団と1周近くの大差をつけて高木美、佐藤がゴールした。
同選手権では高木美が風よけになって高木菜をアシストした。今回は助けてもらい、今大会3個目の金メダルを獲得した高木美は「日本のチーム力を出せた」と喜んだ。佐藤は「菜那先輩が良い役割をしてくれたお陰。こんなにうまくいくとは思わなかった」。北海道出身の3人は「してやったり」の笑顔で、地元での大会を締めくくった。(菅沼遼)