東京都小金井市で昨年5月、音楽活動をしていた冨田真由さん(21)がファンの男に刺され重傷を負った事件で、殺人未遂などの罪に問われた群馬県伊勢崎市の無職岩埼(いわざき)友宏被告(28)の裁判員裁判の判決が28日、東京地裁立川支部であった。阿部浩巳裁判長は、懲役14年6カ月(求刑懲役17年)を言い渡した。
起訴状などによると、岩埼被告は昨年5月21日午後5時5分ごろ、東京都小金井市本町6丁目のアーケード内で、冨田さんの首などを折り畳みナイフで少なくとも34カ所刺し、殺害しようとしたとされる。冨田さんは一時意識不明の状態になり、その後意識が回復。しかし、口など一部の神経がマヒし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負うなどの後遺症が残った。
裁判で検察側は、事前にナイフを購入していることなどから「一定の計画性があり、強い殺意があった」と主張。「他に類を見ないほど悪質で、反社会的な犯行」として、同じような事件でのこれまでの量刑にとらわれるべきではないとした。また冨田さんの代理人弁護士は、無期懲役にするべきだと訴えていた。
一方の弁護側は、犯行直後に被告が119番通報していることなどを挙げ、「衝動的な犯行で計画性はない」と反論。同じような刺傷事件での刑の重さを考慮すべきだと主張していた。
裁判の中では冨田さんも出廷し、意見を陳述した。しかし、証言の途中で岩埼被告が「じゃあ殺せよ」などと繰り返し怒鳴り、阿部裁判長から退廷を命じられていた。(根津弥、志村英司)