自筆のメッセージを手にする春名風花さん=東京都渋谷区、竹花徹朗撮影
3月8日は国際女性デー。「はるかぜちゃん」こと声優の春名風花さんは「子どもには、誰かが決めた男の子らしさや女の子らしさではなく、まだ誰も見たことのない新しい道を、自分らしく進む権利があるんだよ」と語りかけます。
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ぼくは、自分のことを「ぼく」と呼んでいます。小学生のころから今まで、学校や家でも、自然にそう言っています。誤解されることがありますが、男の子になりたいわけではありません。
■対等に話せる一人称が欲しい
女性が使う一人称は「わたし」だけど、ちょっと堅苦しくて、しっくりこない。名前を一人称に使う人もいるけど、少し幼く感じる。男性は時と場合に応じて「オレ」や「ぼく」、「わたし」も使えてうらやましい。どうして女性には普通の一人称がないんだろう。女の子だって、改まるでも、こびるでもない、人と対等に話せる一人称が欲しいのに……。
そう! 確かきっかけは、大好きなアニメ「少女革命ウテナ」の主人公「ウテナ」が自分のことを「ぼく」と呼んでいたことでした。ピンクの長い髪に学ラン姿。大切な友達を守るために闘い、強くなりたいと願うウテナは、りりしくて、かっこいい、ぼくのあこがれです。
ウテナを演じていた声優の川上とも子さん(故人)は、オーディションの時、ほかの声優さんが皆、ボーイッシュな声でウテナを演じるなかで、自然に女の子の声をあてたといいます。ぼくは、その話にとても感動しました。
■「りりしい女の子」でありたい
ぼくは、男の子に選ばれて、守られる女の子じゃなくて、「りりしい女の子」でありたい。そして、自分の足で生き、大切な友達をいじめや、いろいろなものから守れる女性になれたらいいなと思います。
「女の子らしさ」って、知らず知らずのうちにかけられている「呪い」なのかもしれません。
少し前に、「仮面ライダーゴースト」のベルトを買ってほしいと泣く女の子の動画が話題を呼びました。「○○は女の子だから、買いません」と諭すお母さんに、悪気は全然ない。でも、きっと、お母さん自身が「女の子らしく」と言われて育ったのだろうなと思いました。お母さんのお母さん、そのお母さんから、脈々と受け継がれてきたのかもしれないと。
ぼくは動画を見た時、あの子のところに飛んで行って、「女の子も仮面ライダーになっていいんだよ!!」って言いたくて、たまりませんでした。
女の子のおもちゃといえば、プリンセスのメイクセットや、おままごとセットなど、着飾ったり、赤ちゃんのお世話をしたりするものが多い。そんなおもちゃで遊んで育ったら、おしゃれに気をつかえて、家事が得意なお母さんになれるかもしれません。でも、いま、そんな枠にはめこむ必要はあるのでしょうか。
■女の子にできないことなんて、ない
身体の大きな男性が狩りに出て、女性が家事をしていた時代と違って、ぼくたちの時代で、男の子にはできて、女の子にできないことなんて、もう、なにもありません。
仮面ライダーが大好きな女の子も、長い髪の男の子も、自分のことをぼくと呼ぶぼくも、もっと自由に生きていい。子どもには、誰かが決めた男の子らしさや女の子らしさではなく、まだ誰も見たことのない新しい道を、自分らしく進む権利があるのです。
「あの子は、なぜ違うの?」と不思議に思ったら、「なんでそうなの?」って聞いてほしい。聞かれたら、こう答えればいい。
「これが、わたしらしさ、だよ」
押しつぶされることも、染まることもなく、ただ、自分の思うことを聞き、話す。みんなの声が積み重なれば、少しずつ社会は前に進んでいける。きっと、何にだってなれるよ!(聞き手・市川美亜子)
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はるな・ふうか 16歳の高校1年生。通称はるかぜちゃん。9歳からツイッターを続け、フォロワーは約17万人。テレビや舞台に出演し、声優としても活躍している。4月からNHKラジオの高校講座「国語総合」に出演予定。