稀勢の里(右)は寄り切りで鶴竜に敗れる=伊藤進之介撮影
(25日、大相撲春場所14日目)
強行出場した稀勢の里から思い出したのは、2001年夏場所、けがを押して22度目の優勝を決めた貴乃花(現親方)のことだ。
どすこいタイムズ
14日目の武双山(現藤島親方)戦で右ひざを負傷し、千秋楽はテープでがっちり固めていた。本割で武蔵丸(現武蔵川親方)に敗れて2敗で並ばれたが、決定戦は上手投げで勝利。表彰式で当時の小泉首相が、「痛みに耐えてよく頑張った。感動した」と叫んだ。
だが、代償は大きかった。けがは致命傷になり、貴乃花は翌場所から7場所連続全休。再び賜杯(しはい)を抱くことのないまま、10場所目に引退した。目の前の優勝と引き換えに、力士人生を縮めたのは間違いない。
さて、稀勢の里だ。新横綱の場所は二度とない。出場にこだわり続ける信念も素晴らしい。ただ、無理をした決断が負傷を悪化させはしないか、不安が残る。
稀勢の里は新十両、新入幕とも昭和以降で貴乃花に次ぐスピード出世。横綱としても、相撲人気を支えた姿を継いで欲しい。それだけに、けがをした後の状況までは似ないことを願っている。(竹園隆浩)