投票者らに手を振る林鄭月娥氏(中央)=26日午前9時38分、香港会議展覧センター、益満雄一郎撮影
香港政府のトップを決める行政長官選挙が26日、投開票され、前政務長官の林鄭月娥(キャリー・ラム)氏(59)が当選した。林鄭氏は中国の習近平(シーチンピン)指導部の「本命」とされ、親中派の多くから得票した。初の女性長官となる。ただ世論調査で香港市民からの支持率は低迷しており、難しい政権運営を迫られそうだ。
選挙管理委員会の発表によると、林鄭氏は777票で、当選に必要な選挙委員(定員1200)の過半数(601)を1回目の投票で上回った。直前の世論調査で56%の支持率があった前財政官、曽俊華(ジョン・ツァン)氏(65)は365票、元裁判官の胡国興氏(71)は21票だった。
林鄭氏は梁振英(C・Y・リョン)現長官(62)のもと、選挙制度改革を担当。若者が「真の普通選挙の実現」を訴えた2014年の大規模デモ「雨傘運動」で、香港政府代表として若者と対話し、要求を退けた。こうした中国政府の意向に沿った実績を評価して習指導部が候補に推したとされる一方、若者層を中心に人気が低迷。世論調査の支持率は曽氏の約半分まで低下していた。
選挙委員の約7割は親中派で占められている。中国指導部の意向が選挙結果を左右し、民意は投票結果に直接影響しない。世論の支持を得ていない林鄭氏が選ばれたことは、香港社会の分断や政治不信を広げかねない。民主派は「民意を得ていない」として、習近平(シーチンピン)国家主席が出席し、世界の注目が集まる7月1日の香港返還20周年式典をにらみ、対決姿勢を強める考えだ。林鄭氏は記者会見で、「分断を修復し、市民を団結させることが最重要の仕事になる」と語った。
林鄭氏は中国政府の任命を経て、7月1日に就任する予定。任期は5年。(香港=益満雄一郎)