化学兵器とみられる爆撃があった4日朝の様子を語るアラー・ユセフさん=8日、トルコ南部アンタキヤ、メスット・クチュクアルスラン撮影
シリア内戦の反体制派が拠点とする北西部イドリブ県で、アサド政権軍の化学兵器使用が疑われている問題で、被害を受けた住民3人が北隣のトルコで朝日新聞の取材に応じた。住民は「現場は民間人が暮らす住宅地。反体制派の軍事施設はない」と断言し、「政権軍は化学兵器で爆撃し、市民を虐殺した」と訴えた。
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特集:シリア情勢
住民によると、4日午前6時半ごろ、イドリブ県南部ハーン・シェイフン上空でロシア製のスホイ機とみられる戦闘機2機がミサイルを複数発射し、100人以上が死亡したという。
トランプ米大統領はアサド政権軍による化学兵器の使用を断定し、政権軍の空軍基地を標的にミサイル攻撃に踏み切った。これに対し、政権側は化学兵器の使用を否定し、政権を支援するロシアも「反体制派の倉庫をシリア軍が爆撃し、(貯蔵されていた)毒ガスが流出した」と説明する。
一方、ハーン・シェイフンの医療施設職員アラー・ユセフさん(27)は「(同地の)倉庫は反体制派の化学兵器貯蔵庫ではなく、小麦などの穀物倉庫だった」と指摘し、ロシア側の説明と食い違っている。住民によると、同地は5年前から政権軍の爆撃を受け、過去にも塩素ガスのような化学物質を投下されたことがあったという。
米国によるシリアへのミサイル攻撃を受けて、シリア情勢が主要議題となる主要7カ国(G7)の外相会合が10日、イタリア中部ルッカで始まった。ティラーソン米国務長官は会合後、ロシアを訪れる予定だ。(トルコ南部イスケンデルン=渡辺丘、ルッカ=山尾有紀恵)