「バー・コロン」の店主鶴田健之さんと自前の非常用袋=熊本市中央区
昨年4月の熊本地震を経験し、「マイ非常用袋」を提唱しているバーテンダーがいる。それぞれの家庭の事情に合わせ、話し合ってものを詰め込んでいくことで防災の意識が高まることも期待する。
■熊本地震後、仲間と議論
熊本市中央区の繁華街にある「バー・コロン」。ウイスキーボトルやグラスが並ぶ薄暗い店内の入り口近くの壁際に、「非常用袋」と大きく書いた銀色の袋がぽつりと置かれていた。しゃれたバーの店頭になぜ。
「ちょっと邪魔になるような場所に置くことで、非常用袋を意識するようになる」と店主の鶴田健之さん(51)。袋の中には、被災地支援をしてきた大分県のバーテンダー仲間の意見を参考にしながら、自分が必要だと思ったものを選んで詰め込んでいる。
「マイ非常用袋」をつくろうと考えたのは熊本地震後の昨年夏ごろ。大分市のバー「ベイビームーン」の店主で、東日本大震災や熊本地震の復興支援ボランティアをしてきた関元健二さん(56)らと「市販の非常用袋はいざというときに役に立つのか」という話題で白熱したことがきっかけだった。
誰でも気軽につくれるようにと、予算を約5千円に設定。災害発生後、支援物資が届きづらい1、2日を生き延びるためには何が必要か意見を出し合い、食料や水、懐中電灯、携帯用トイレなど20品目を選んで、100円均一ショップなどで買いそろえた。
東日本大震災の被災地で支援経験のあった仲間は意外なものを提案した。その一つがマウスウォッシュ。歯磨き代わりに洗口できるだけでなく、「気持ちもリフレッシュする」という被災者が多かったからだという。棒状のケミカルライト(サイリウム)は、夜間に居場所や危険な場所を示せるというのが理由だった。
鶴田さんは、熊本地震の際にガ…