(25日、大相撲夏場所12日目)
相撲特集:どすこいタイムズ
勝てば、大関昇進に向けて大きな白星になることはわかっていた。重圧もあったのだろう。「まあ、いろいろ考えました」。取組前、高安は立ち合いに悩んでいた。
「踏み込ませたくない」と選んだのは意外な手だった。前日までに見せていた強烈なかちあげでなく、今場所初めて、もろ手で突いて出た。八角理事長(元横綱北勝海)は「星勘定したんじゃないか。いつも通りいけばいいのに」。ぎこちなく、前日までの馬力がない。が、結果的に「その手は忘れていた」という宝富士の虚を突いた。
右上手をつかみ、止まらず投げをくり出す。土俵際で一度はこらえられたが、「一回いったら振りきるしかない」と高安は攻め続ける。歯を食いしばって、もう一度、右足をかけつつ投げきった。
「内容的には良くない。でも、大事な1勝には変わりない」と、穏やかな表情で振り返った。3日を残して、大関昇進の目安「直近3場所を三役で33勝」に達した。ただ、過去には雅山や把瑠都のように、目安を満たしても昇進が見送られた例がある。まだ安全圏ではない。
二所ノ関審判部長(元大関若嶋津)は「(昇進の判断は)千秋楽をみてから。横綱に勝ってほしいよね」と注文をつけた。13日目の相手は横綱日馬富士。「自分のこれからの相撲人生で大事な一番だと思います」。重圧はまだ続く。(菅沼遼)