憲法改正と安倍晋三首相をめぐるこの1年の主な動き
安倍晋三首相は2016年春、夏の参院選に合わせて衆院解散・総選挙を行う衆参ダブル選挙を見送り、ひとつの決断をした。
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「憲法改正の国会発議は衆参それぞれで3分の2(以上の賛成が必要)。与党だけでとることは不可能だ」。伊勢志摩サミットを終えたばかりの昨年6月1日の記者会見で、首相はダブル選の見送りを正式に表明する一方、憲法改正の発議についてそんな見方を示した。
首相周辺は「夏の参院選で、与党におおさか維新の会(当時)などを加えた改憲勢力で3分の2を確保。衆院でも3分の2が維持できる残り2年半の任期内に、憲法改正を目指す」との改憲シナリオが、首相の念頭にあったと明かす。サミット後に表明した消費増税先送りも「参院選を有利にし、3分の2を得るためにも掲げた」という。
ダブル選の見送りが固まると、首相最側近の今井尚哉(たかや)首相秘書官は、かねて衆参同日選に否定的だった菅義偉官房長官にある会合で訴えた。
「あなたが総理に衆院解散の先送りを進言した。3分の2を維持したまま、やれるところまでやりましょう」。さらに、今井氏は「憲法改正をやらないまま終わるわけにはいかない」とも強調。一方で、首相には「憲法改正は、いまの衆院議員の任期中です」と直言した。
首相は参院選の選挙演説で憲法改正には触れず、消費増税の先送りや経済政策「アベノミクス」の実績を強調。7月10日の参院選で勝利し、改憲勢力は全体の3分の2を占めた。投開票日の夜、首相は民放番組で「しっかりと(発議に向け)橋がかかった。これからは国会の憲法審査会で、いかに与野党で合意を作っていくかだ」と語った。
だが、想定外の事態が生じた。参院選から3日後の7月13日、NHKが「天皇陛下が退位の意向」と報じたのだ。天皇の地位は憲法に定められており、退位と憲法改正の検討を同時に進めれば議論が複雑になる。安倍政権は退位の議論を優先せざるを得なくなった。
ただ、改憲シナリオの実行に向…