東芝が、半導体子会社「東芝メモリ」の売却先について、米半導体大手のブロードコムに優先交渉権を与える方向で調整に入ったことがわかった。有力視されていた政府系ファンドの産業革新機構を軸とする「日米連合」の条件提示が遅れたままで、好条件を示すブロードコムに判断が傾いた模様だ。
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関係者によると、東芝は今月に入ってブロードコムとの詰めの協議をはじめた。債務超過を解消して上場廃止を回避するために、今年度中の東芝メモリ売却を迫られている。残り時間が少なくなる中で、日米連合からの条件提示が出てこないなら、いったん見切りをつけて今月中旬にもブロードコムに優先交渉権を与える方針という。
東芝の協業先で、売却手続きの中止を国際仲裁裁判所に申し立てた米ウエスタンデジタル(WD)は、ライバル視するブロードコムへの売却に反発してきた。東芝は、ブロードコムに優先交渉権を与えた上で、同社とWDとで直接交渉してもらうなどし、着地点を探りたい考えだ。
ブロードコムは、米投資ファンドのシルバーレイクと組んで入札に参加。5月19日にあった2次入札では、買収金額を2・2兆円規模とし、その後の継続投資も約束するなど好条件を示した。東芝がつくる半導体メモリーとは別の通信向け半導体の大手で、各国独禁当局の審査に時間がかかるおそれも少ない。